ついに7戦連続で違う勝者を生み出した今年のF1シーズン。レース終盤、トップに立っていたフェラーリのフェルナンド・アロンソが予定していたはずのピットストップを避け、チェッカーまで走りきる作戦を取ったがタイヤのグリップ力が一気に低下してしまいタイムが低下してマクラーレンのルイス・ハミルトンに逆転を許した。そのときテレビ中継では解説者が「これはタイヤが崖を超えましたね」と発言していたが、その意味は「タイヤの限界を超えて、もうレースを争うタイムでは走れないタイヤになったこと」を言い表していた。まさにタイヤが『陰の主役』だと言っていいだろう。

今年のF1タイヤの性能特性は、じつはとても電池に似ている。マンガン電池とアルカリ電池だ。マンガン電池は供給できる電力のピークからなだらかなカーブを描くようにして徐々に電力が落ち込む。一方、アルカリ電池は長くピークに近い電力を供給するが突然電力が落ち込む。崖から落ちるような感じだ。今年のタイヤはまさにアルカリ電池的なタイヤ寿命なのだ。

ではチームの課題はどこにあるか。それはズバリタイヤの寿命を予測すること。走り方やマシンセッティングで多少寿命時期がずれる。しかし、それを完全に把握すればピットインのタイミングは失敗しない。じつはいま各チームが必死に把握しようとしているのがタイヤ寿命なのだ。そしてカナダGPでフェラーリは失敗した。フェラーリ関係者に聞くと「本当は2ストップの予定でしたが、後ろからハミルトンが迫るなか、勝利への欲が作戦を変えた可能性は否定できないですね」と、勝利するための決断だったことをこっそりと明かした。

ではドライバーは怒っていたかと思ったら違った。フェルナンド・アロンソは「勝利のために僕たちは1ストップを決断したのだから、結果は5位だけど、まったく後悔はないよ」とチームを擁護した。今年、フェラーリは開幕当初遅いと言われながらも、ここ数戦で劇的にマシンは改善されている。チームが一体にならなければ勝てないことを知る王者経験者らしい発言だった。

そして現在、3つのチームで日本人エンジニアがタイヤ分析に携わっている。その結果は今後のリザルトに現れるだろう。今年はタイヤに注目だ。(モータージャーナリスト・田口浩次)