第6戦モナコGPを終え、今季6人目の勝者を生んだ2012年シーズン。ドライバーたち自身が毎回「優勝候補は10人くらいいる」と発言するほど接戦が続いているが、このモナコGP前後では、F1のもうひとつの顔を見ることができる。ビジネスとしてのF1だ。

今年もモナコのハーバーには各チームをスポンサードする企業たちが借り切った巨大クルーザーが何艘も並び、船上パーティーが繰り広げられた。こうした企業にとって、グランプリ会場へVIPを招くことはビジネスをさらに発展させるために必要不可欠なことであり、高額なスポンサーシップにも引けをとらないマーケティング費用を投入する。F1をブランドの価値向上に利用するためだ。時計のタグ・ホイヤーや、シャンパンのマム、燃料のトタルなどは、広告も積極的にF1をイメージさせ、ブランド価値向上の活動を長年継続している。VIPの招待、広告でのF1活用、そうした従来のマーケティングをさらにステップアップした利用法を見出したのが、タイヤのピレリだ。

もちろん、ピレリも毎グランプリに100名規模のVIPを招待し、さらにモナコではドライバーに料理対決をさせるといった、話題のイベントを組み込む、従来のマーケティング活動はしっかりおこなっている。そして、彼らが新たなF1の活用先に見出したのが、なんと決算報告会なのである。

企業の業績を広く公表する決算報告。彼らはここにアートとF1を組み込んだ。ぶ厚い決算報告書には、デザイナーがデザインした装飾をほどこしたブックカバーを用意し、企業の幹部がまるで役者のように振舞って、これまでの業績報告と今後の予定を短い番組調にして語り、さらには企業哲学を伝えるために、アーティストとコラボレートして、決算報告書とはまったく関係ないポスターや映像を制作する。素材としてF1も積極的に使う。その過程をアーティスト自身が、企業精神との共通性を説明しながら語っていく。

日本人の感覚ではわからないことだらけなのだが、これがヨーロッパでは受けている。単純な企業決算とはちがって、株主などが企業の目指す先をイメージできるというのだ。モナコGPもそうだが、F1はスポーツではなく文化として認められていると、ここモナコでは実感できるのである。(モータージャーナリスト・田口浩次)