最近の野球界は大ベテランの奮闘ぶりが目につく。海の向こうの米国ではジェイミー・モイヤー投手(ロッキーズ)が49歳151日で勝利を挙げた。国内でも中日の山本昌投手が46歳を過ぎても白星を積み重ねる。アラフォーどころか50歳に近いオジサンたちが第一線で活躍している。

モイヤー投手は4月17日のパドレス戦で先発し7回2失点(自責点0)と好投。2010年に左肘の手術を受けながら見事な復活を果たし、大リーグの最年長勝利記録を80年ぶりに更新した。

偉業達成のベテランは、私にとって思い入れのある選手である。シアトルで学生時代を過ごした時、地元のマリナーズでプレーしていた。160キロ近い速球を投げる投手が珍しくない大リーグで、130キロ台の直球とチェンジアップを武器に強打者を手玉に取った。ファンの一人として球場やテレビで興味深く見たものだ。

一昨年、初めて大リーグを取材する機会があった。当時ブレーブスに所属した斎藤隆投手(現ダイヤモンドバックス)は40歳。時速150キロの球を投げる、衰え知らずの剛腕に驚かされた。トレーニングの理論書をいつも持ち歩き、体の使い方を熱心に研究していた。頑丈な肉体の秘密について聞くと「本当に分からない。高校時代のトレーニングがたまたま良かったのかもしれない」と自分でも不思議がっていた。偶然の積み重ねによって今があると、とらえているように思えた。

山本昌投手は4月15日の阪神戦で今季初勝利を挙げ、セ・リーグの最年長勝利記録を更新した。昨春に右足首を痛めてシーズンを棒に振ったが、秋に手術を受けて表舞台に戻った。同じ左腕で、故障を乗り越えて復活した点はモイヤー投手とよく似ている。通算210勝以上の大ベテランも「今でも登板前日は緊張する」そうで、日頃の練習に真面目な姿勢で取り組む姿が印象的だ。17年ぶりに中日を率いる高木監督も20歳代のころと比較して「体も丈夫だし、変わっていない」と驚くくらい、年齢を感じさせない投球を見せている。

食事法やトレーニング環境が時代とともに発達したことで、肉体面の衰えを補うことができるようになり、選手の寿命が伸びたことは確かだろう。しかし、年を取ってもプロの世界で必要とされる高い集中力や強靱な精神力を維持するのは決して容易ではない。内面に隠され、比較的注目されることの少ない「心技体」の「心」の強さがある選手だけが、長い現役生活を送ることができるのだ。

斎藤隆投手は「きょうけがをして野球人生が終わるかもしれない」と自らに言い聞かせていた。山本昌投手は「ユニホームを脱ぐ覚悟はとっくにできている。しつこいから最後まで頑張りたい」と話した。ベテランになればなるほど体を痛めるリスクは上がり、一度けがをすれば再起できなくなる可能性も高くなる。限りある選手人生を、悔いのないよう全力を尽くす気持ちが、まだ先があると考えがちな若い時よりも強くなっているのかもしれない。

スポーツ選手に限らず、誰もが年を取る。取材を通じて学んだことを自分でも生かしていきたいと思う。

上地安理(うえち・あんり)1980年東京都生まれ。他業種を経て2006年に共同通信入社。アマチュア野球、プロ野球などを担当し、現在は名古屋支社運動部で遊軍。