関西で根強い人気を誇るプロ野球・阪神の調子が芳しくない。4月20日に首位の座を明け渡すと、最大で5あった貯金が瞬く間になくなった。

勝率5割に後退した5月3日の中日戦では無死一、三塁から新井貴、マートン、ブラゼルと中軸が凡退し、今季初めて勝率5割を切った4日は打線がわずか1安打。ゴールデンウイークにかけての9連戦で初戦から引き分けを挟んで5連敗を喫し、その間は計4得点と打撃陣の不振が深刻だった。片岡打撃コーチは「シーズンは長いから好不調の波はある。今はチーム全体がそういう時期だから」と言う。好機をつくっても点が入らない泥沼の状態で「2死からでも四球で塁に出たりして、相手にプレッシャーをかけないと」と打開策を模索している。連敗を5で止めた5日の巨人戦前には、通常2カ所の打撃ケージを使う打撃練習を1カ所のケージで行って集中力を高める工夫もしたが、2得点にとどまった。

ただ、裏方の見方はちょっと違う。2003年からチームを支える山崎打撃投手は「今ちょっと打てないからって一喜一憂することはまずない。レギュラーは特にそう」と言い切った。試合前の打撃練習では、首脳陣や打者の求めに応じて投げるコースや距離などを変えることがあるくらいで、特別なことをしていないという。理由は、選手は1年間のトータルで考えているからだそうだ。長くチームの打者相手に投げているスタッフの言葉だけに、説得力がある。「20打席連続で三振したり、30打席安打がなかったら話は別だけど、そんなことはまずないでしょ。15打席もあればヒットの1本は出るんだから」

日々の原稿を書く上で、打線の不振で負ければその試合のポイントとなったシーンを取り上げることが多い。長いスパンでもこの何試合で不調が続く、という捉え方になりがちだ。外からの視点と、実際にプレーしている側の感覚はやはり違うのかもしれないな、と思わざるを得ない。シーズン144試合で考えると、目の前の結果にとらわれていてはもたないというのもあるのだろう。

昨年から統一球が導入され、球界全体で本塁打が激減するなど影響が出ているのも気になるところ。阪神の本拠地、甲子園はバックネット裏に「銀傘」と呼ばれる大きな屋根が設置されている。これが高い位置にあるため、音が実によく響く。統一球は従来のボールと比べて打球音が鈍く、甲子園ではよけいに気になってしまうこともあるという声も聞く。これには山崎打撃投手も「音も全然違うし、打球はちらっと振り返るけどスタンドに入ったかなという当たりでも飛ばないよね」と証言した。本拠地だけに当然、他球団よりも多くの試合数を甲子園でこなす。飛ばないものは飛ばない。打とう、打とうと力んでもかえって悪い結果を招くだけという悪循環に陥ってしまう。

まるで“長期休暇"に入っていたかのような打線が、ロードの新潟で突然、反発力を示した。8日の広島戦で相手投手陣を打ち崩して劣勢の試合をひっくり返し、和田監督も「カベを越えつつある」と復調への手応えをにじませた。これが本当の「目覚め」となったのかどうか。

長井 行幸(ながい・みゆき)1984年、千葉生まれ。2007年、共同通信に入社し大阪支社勤務。高校野球、ラグビー担当を経て今季から阪神を担当。