宮城県柴田郡にある仙台大女子柔道部には、ちょっと面白いオキテがある。「うちはね、つらい時につらい顔しちゃいけないんです。だって、試合で相手に苦しいのを悟られてはいけないでしょう。だから、稽古中、私にイヤミを言われても、何があっても笑顔でいなくちゃいけない(笑)」。こう話すのは南條和恵監督(39歳)だ。

自身の学生時代、道場の空気がいつもぴりぴりムードで苦しかったという経験から、教え子にはそんな空気で練習させたくないと考え「道場にいるのが楽しいと感じられる雰囲気」を大切にしてきた。

「道場に来るのが楽しいと思えたら、練習にも集中できる。学生も私も毎日顔を合わせるんだし、少しでもお互いに機嫌良く、楽しいほうがいでしょう」

実際のところ、仙台大はこの方針のもとで成績を残してきた。2002年に南條監督が指導を始めて以来、わずか10年の間に学生チャンピオンが2人、世界選手権代表が1人育ち、全国でも有数の強豪校に成長。3人からスタートした部員数も年々増加。選手獲得に苦労する地方の大学ながら、今年度は5人の新入部員が加わり、31人にまでなった。ちょうど1年前、当欄で東日本大震災の被災直後の仙台大柔道部の様子を紹介した時、南條監督は「来年は入部希望者がゼロかも」と不安を口にしていたのだが、1年たってみるとそんなことにはならなかった。

「いつもの年より2、3人少ないのですが、それでも5人も来てくれるなんてありがたいことです。うちの厳しい練習や楽しい雰囲気のことをよく理解して入ってきてくれると思うと、ほんまにうれしい」

昨年の春は落ち着かない中でのスタートだったが、今年は腰を落ち着けた中で新シーズンがスタートした。今年も目標は学生の団体戦で日本一になることと、そしてもう一つある。「部員には自分の周りを元気にするような人になってほしいと思っているんです。母親になるなら元気な母ちゃん、仕事をするならその人がいるだけで職場がパッと明るくなるような人。そういう人っているでしょう?」そう聞いて深く納得した。彼女たちと接するうち、いつのまにかずいぶん朗らかな気持ちになっていたからだ。(スポーツライター・佐藤温夏)