選抜高校野球大会は白熱した攻防が続いているが、開幕早々にいきなり大型右腕対決が実現した。ともに190センチを超える速球投手で、今秋のドラフト会議の上位指名候補に挙げられる花巻東(岩手)の大谷翔平、大阪桐蔭の藤浪晋太郎が初日の第3試合で投げ合った。注目の一戦は9―2で大阪桐蔭が圧勝した。左股関節の故障の影響で昨秋の公式戦を投げていない大谷は球数が増えた中盤から崩れ、調整不足は明らか。昨夏の甲子園で初戦敗退した悔しさを晴らすことはできなかった。

193センチの右腕は、昨夏の甲子園で故障を押して投げたにもかかわらず、最速150キロをマーク。2009年、春の選抜大会で花巻東を準優勝、夏ベスト4に導いた左腕、菊池雄星(現西武)を「岩手で30年に一人くらいの逸材」だと思っていた佐々木洋監督は、直後にこんな素材が現れたことにびっくりしたという。

今は「みちのくのダルビッシュ」という呼び名のほうが通りはいいが、最初は新聞の見出しは「雄星2世」だった。その「2世」が「雄星」と違うところは、打撃でもセンスにあふれるところだ。菊池は下位を打ったが、大谷は1年春からすでに中軸を任された。佐々木監督は「体の使い方がうまく、ヘッドに一気に力を伝えられる」と評する。大阪桐蔭戦では藤浪から先制本塁打を放った。

あれだけの長身にもかかわらず、フィールディングもうまい。野球以外でも運動神経は抜群で、チーム関係者は「サッカーをやっていたとしても一流になっていたでしょう」という。投球以外は不器用な印象だった菊池とはかなりの差だ。加えて、比べてしまうと菊池には申し訳ないが、長身にちょこんと乗っている小顔はなかなかの「イケメン」でもある。「何でもできて、顔までいいんですよ。腹立つでしょう」と佐々木監督は冗談交じりに話す。

だが、菊池にあって大谷にないものもある。「がむしゃらさ」だ。菊池は投手だからやっては駄目、と言われていてもついヘッドスライディングをして怒られた。高校野球ではひんしゅくを買うガッツポーズを試合中に何度もし、負けると周りに支えられないと歩けないくらい泣き崩れた。自分の感情をあらわにするだけでなく、周りを見てベンチで士気を高めようともしたり、練習でチームメートがだらけた様子を見せるといさめたりもした。一方大谷は良くも悪くもあくまでマイペースだ。

昨夏の甲子園、1回戦で帝京に1点差で敗れた大谷は責任を背負い、「勝利を届けたかった」と東日本大震災の被災者を思って涙を流した。雪辱を期した今春も初戦で強敵に敗れた。2度の敗戦は大谷をより強くするのだろうか。最後の夏は今度こそ体も万全な状態で臨むことができるはず。悔しさをばねに成長し、がむしゃらに勝利を求める姿を、この夏の甲子園のマウンドで見たいと思う。

白石智絵(しらいし・ちえ)愛媛県出身。テレビ局勤務を経て1996年共同通信社入社。大阪支社、名古屋支社で主に高校野球、プロ野球を担当し、現在2度目の大阪支社勤務。1児の母。