米国のレスリング界で往年の五輪金メダリスト2人が現役復帰し、ロンドン五輪出場を目指している。ともにプロに身を投じ、そちらでも輝いた選手。普通の人では経験できない脚光を嫌と言うほど浴びながらも、また世界最高峰の舞台を目指す。

一人は1996年アトランタ五輪フリースタイル100キロ級で優勝したカート・アングル(43)。五輪金メダリストの肩書をもってプロレス入りし、ヒール(悪役)ながらWWEのスターとして活躍した選手だ。

もう一人は、2000年シドニー五輪グレコローマン130キロ級で、五輪4連覇を目指したアレクサンドル・カレリン(ロシア)を破って国民的ヒーローとなったルーロン・ガードナー(40)。2004年アテネ五輪で銅メダルを取って引退しPRIDEに参戦。同年大みそかに吉田秀彦との「五輪金メダリスト・マッチ」に勝ってプロ格闘技の世界でも名を挙げた。

プロの試合はこの1試合で終わったが、カレリンを破った実績もあってネームバリューは十分。こちらは1月下旬に米国内で行われた「KiKi Cup」(団体戦)に出場し、4戦全勝という成績だった。

十分すぎるほどの栄光を手にした彼らを、その歳になってもさらに動かすものは何なのか? 米国レスリング協会はロンドン五輪の金メダリストに25万ドル(約1900万円)を支給することを決めているが、プロでも成功した彼らがそんな「はした金」で動くものだろうか(そう考える前に、そこまでたどりつく可能性は0に近いだろうが…)。

端的に言うなら「オリンピックの魅力」なのだろう。世界選手権出場を目指してなら、カムバックはしないはず。オリンピックなればこその再挑戦だと思う。

「アマチュアに引退はない」と言われる。何歳になっても、挑みたくなったら、挑めばいい。最盛期に比べれば下がったネームバリューを回復するための売名行為なら顔をしかめるが、純粋に挑戦する気持ちでの行動なら、拍手を送りたい。

何歳になっても、挑戦する姿は美しい。(格闘技ライター・樋口郁夫)