昨年12月23日、横浜文化体育館で開催された現役プロ野球選手が高校生に技術指導などを行うシンポジウム「夢の向こうに」を取材して、心底「今の高校生がうらやましいなあ」と思った。

同日は神奈川・日大藤沢高出身で46歳の山本昌投手(中日)、神奈川・鎌倉学園高出の長田秀一郎投手(西武)らプロ7選手が参加。山本昌は野球の基本となるキャッチボールの大切さや投球の際の体、腕の使い方など細かな技術もステージの上で指導した。神奈川県下から集まった約4千人の高校球児の中には熱心にメモを取る生徒もおり、プロ選手から多くを学び取ろうとする姿が印象的だった。筆者も高校時代には神奈川県で野球に打ち込んだ。その当時、こういった機会があれば「もっとうまくなったんじゃないか」などと夢想してしまった。

2003年12月に始まった「夢の向こうに」は昨年で全47都道府県を回り終え、一区切りを迎えた。これまではホールなどで行われ、高校生は制服姿で指導を受ける「講義」といった趣だったが、ことしはテストケースとしてグラウンド上で両者がユニホームを着用する形で実施される。高校生から「グラウンドで指導を受けたい」という声が多かったためだという。

日本球界は1961年にプロ側の選手引き抜きが問題化した「柳川事件」をきっかけに、プロアマが断絶状態に陥った。今なお、日本学生野球憲章ではプロがアマチュア選手を指導するには多くの制限を定めている。それでも、「夢の向こうに」が両者の雪解けを進める役割を果たしてきたと見る関係者は多い。

学生野球憲章の改正で昨年、大学生とプロの試合が可能となり、中大―巨人などの交流戦が行われた。この12日には、元プロ選手が高校野球の指導者になる条件を日本高野連が緩和した。「高校の教諭や臨時講師で2年以上の在職が必要」としていたものを「中学教諭や臨時講師として2年以上の在職」でも認めることとしたのだ。プロ選手がオフに高校で練習を行う際は原則として母校に限られていたが、都道府県連盟に申請すれば母校以外でもできることになった。

一歩一歩ではあるが、プロとアマの垣根は低くなりつつある。サッカーの天皇杯全日本選手権のようにプロが大学生や高校生と真剣勝負をしたり、自由に指導したりすることは、野球界ではまだ「夢物語」だ。昨年12月の取材で、山本昌が「今は母校に行っても『もし迷惑をかけたら』と思いながら練習している。早く自由にアドバイスができるようになってほしい」と話した言葉が強く印象に残っている。

山本 地平(やまもと・じへい)1973年生まれ。横浜市出身。2008年3月、他社の運動部記者から共同通信社に転身。大阪支社で遊軍をした後、09年5月から東京運動部でサッカー、12年1月からプロ野球を担当