2012年から、モトGPのルールが大きく変更されるのはこれまでにも何度か紹介してきたとおりだ。ホンダ、ヤマハ、ドゥカティは昨年中から、新しい規則に対応した1000CCのニューマシンをテストしており、選手たちもそれぞれ好感触をアピールしている。そのなかでも、昨年のチャンピオンシップを制覇したホンダ陣営は、今年も総合優勝筆頭候補といっていいだろう。

ホンダの新マシンRC213Vは、昨年まで5年間戦ってきたRC212Vの仕様を継承し、排気量を上昇する方向で設計されたマシンだ。2011年最終戦後に行われた2日間のテストでは、今年でファクトリー7年目を迎えるダニ・ペドロサ(スペイン)と2011年の総合優勝を獲得したケーシー・ストーナー(オーストラリア)が、両日ともにワンツーの順位を占める好調なタイムを記録した。

1985年9月生まれのペドロサは、125CC(2003年)と250CCクラス(2004年、2005年)で3年連続の王座を獲得し、鳴り物入りで最高峰クラスへステップアップしてきた。モトGP初年度の2006年から優勝争いを繰り広げる資質の高さを見せ、毎年総合優勝を期待されてきたが、なぜかいつも不運に見舞われて怪我に泣くシーズンばかりが続いた。それだけに、スペインのファンはもちろん、本人もホンダも、今年こそ是が非でも王座を獲得したい、させてやりたいという気持ちが強い。己に厳しい刻苦勉励タイプの性格だけに、彼を囲む関係者の姿からは、日本語で言えば判官贔屓のような心情を誘発されているような感も漂う。

チームメイトのケーシー・ストーナーは、ペドロサから数週間遅い85年10月生まれ。2011年に10勝を挙げて総合優勝を達成し、ホンダの5年ぶり三冠(ライダー、チーム、マニュファクチュアラー)獲得に大きく貢献した功労者だ。10代半ばで欧州に渡って修行を重ね、ペドロサとはスペイン選手権時代からともに鎬を削ってきた。グランプリの世界でも歩調を合わせるように成長しながら好敵手として競いあい、ホンダからドゥカティへ移籍した2007年に総合優勝を達成。そして昨年はホンダへ復帰して、ふたたび移籍初年度ながら総合優勝を獲得するという離れ業を披露した。

2011年のホンダは一昨年までの苦戦が嘘のように、圧倒的な強さを見せつけた。17戦中13勝(ストーナー10、ペドロサ3)、表彰台は17戦51個のうち34個を占拠した。この勢いはおそらく今年も続くであろうだけに、ライバルのヤマハとドゥカティにとっては難攻不落の城塞を前にした心境かもしれない。だが、ほんのわずかの歯車の狂いで大きな迷走を呼び込んでしまうのがこの世界だ。スケジュール上この年末年始はシーズンオフだが、その間も水面下の熾烈な戦いは続いている。メーカー間の開発競争と、コース上で繰り広げられる選手たちのバトルはともに、今年も一瞬の隙をつくぎりぎりの攻防になるであろう。(モータージャーナリスト・西村章)