11月18日(金)の夕刻、スズキが来季からのモトGP活動休止を正式に発表した。理由は「先進国市場の長引く不況、歴史的な円高、災害等により未だ厳しい環境にあるため」だという。

同社のファクトリーチーム・リズラスズキモトGPは、リーマンショック以降、苦しい運営状態が続き、2010年から一台体制へ縮小して参戦を継続していた。同チームに所属するアルバロ・バウティスタ(スペイン)は、2011年、年間ランキング13位で終えている。バウティスタは開幕戦で左太股を骨折し、序盤の2戦を欠場。また、転倒も多く、5戦でリタイアしているだけに、数字を見る限りではめざましい成績ではないものの、シーズン中のレースでは上位陣を脅かすことも度々で、マシンの戦闘力は充分に高いことを窺わせた。

そんな彼らの来季の去就については、今年のシーズン中から、特に欧州で様々な憶測が乱れ飛んでいた。モトGPは来年から新たなルールが発効されて、マシン排気量が最大1000CCへ変更になる。ホンダやヤマハ、ドゥカティなどはこのルールに準拠した新設計のマシンを欧州各地で精力的にテストする一方、スズキについてはそのような情報が一切なく、マシン開発を進めているのかどうかに大きな注目も集まった。同チームの技術監督を務める佐原伸一や河内健は、そのような質問を投げかけられるたびに、「内部では開発を進めているものの、外に対してまだお見せできるような状態ではない」と説明をした。また、来年からの新しいルールの文言によれば、現在の排気量(800CC)で参戦することも可能だが、10月上旬の日本GPの際に佐原が話した口調からは、現行の800CCマシンで可能なら2台体制を実現させたい、というニュアンスも感じ取れた。この日本GPにはスズキ本社経営陣が視察に訪れており、「60~70パーセント程度の好感触を得た」と佐原は説明していた。その一方で「我々としてはアルバロに残留してほしいけれども、彼が他チームと契約をする動きがあった場合に、自分たちの現状では引き留めることができない」とも話した。

11月上旬の最終戦バレンシアGPでも彼らの来季に関する正式発表はなく、レース翌々日から同地で行われた来季用の事後テストでは、バウティスタがサンカルロ・ホンダ・グレッシーニのマシンでテストを実施し、その直後に移籍を発表した。スズキ陣営も他選手を起用して800CCマシンでテストを行ったが、結局、万策尽きて、今回の決断に至った。

活動休止を発表で、彼らは「2014年の再参戦を目途として競争力のあるマシン開発を行います」とも述べている。その際には、ケヴィン・シュワンツ(1993)、ケニー・ロバーツJr(2000)が年間総合優勝を獲得した頃のような、魅力と強さを発揮できる強力な体制で必ずや復帰を果たしてほしいと思う。(モータージャーナリスト・西村章)