10月16日まで行われたゴルフの日本オープン選手権で、3位となった佐藤信人のプレーが印象的だった。2002年には賞金ランキング2位になった実力の持ち主だが、得意だったはずのパッティングで、緊張のあまり動きがおかしくなる、いわゆる「イップス」に悩み低迷。昨年からはツアー出場資格さえ失っていた。その苦悩が垣間見えた4日間だった。

第3日までは難しいパットを何度も沈めて快進撃し、かつての実力をうかがわせた。それが、首位で迎えた最終日は一転した。練習から手の動きが普段と違っていたそうで、1メートル前後の距離をたびたび外してバーディーなし。がちがちになってボールを転がす41歳の姿に、症状の根の深さを見た。

止まったボールを誰にも邪魔されずに打つ競技。考える時間がたくさんある分、不安も膨らみやすい。この大会で18位に終わった石川遼の言葉にハッとした。「僕も経験が増えているが、いいものばかりじゃない。ミスの経験も増えてきている。今は、マイナスな経験からくるイメージと戦うのが難しい。以前なら『いけいけ』でやれたが、そうもいかない」。どんなに順風満帆な選手にも、イップスの芽は潜んでいる。

不振脱出にもがく中で、かつてはパターなどの道具を頻繁に取り換えたこともあった佐藤。しかし最近は「逃げてはいけない。動かなくなる自分と向き合わないといけない」と気付いたという。日本オープン最終日も、動きがおかしいことを自覚しつつ、パニックにはならないようにこらえた。単独3位に踏みとどまり、1540万円を稼いだことで来季はツアー復帰が確実だ。

この好成績で克服への手応えを得たのだろうか。「腰痛と同じでいつ出るか分からないから、いきなり治らない方がいい。徐々に良くなってくれれば」と話す。対策は反復練習しかないというのが結論だ。その慎重さから、険しい道のりに挑む覚悟がうかがえた。

山田亮平(やまだ・りょうへい)1998年共同通信入社。大阪、名古屋支社で近鉄や中日などプロ野球を中心に取材。2005年から柔道、サッカーなどを担当し2007年からゴルフ、08年からスケートも担当。1974年生まれ