人気プロゴルファーの古閑美保が両手首痛による肉体的・精神的な理由で現役引退を決意。5日の引退会見で、リップサービスと思うが、ジムに通ったこともあるキックボクシングへの挑戦を口にしたところ、K-1の谷川貞治プロデューサーの「オファーを出したい。大みそかに出てもらいたい」、DREAMの笹原圭一イベントプロデューサーの「(大みそか予定の)なでしこGPに出ていただきたい」というコメントを目にした。

2人には、あれだけブームだった格闘技をここまで沈滞させた原因のひとつが、スポーツ性を無視したエンターテインメント化だったという意識と反省はないのだろうか。

例えば古閑が「ボクシングで世界チャンピオンを目指したい」と言ったとしよう。「ウチのジムに来てくれ」というジムの会長はいるかもしれないが、「次の大会に出てもらいたい」という関係者は皆無のはず。制度的に不可能だし、もし特例ができたとしても、こんな危険なことをやらせる会長はいない。

いきなりメーンの大会への出場を口にするあたりが、K-1やDREAMの目指すものが強さの追求ではなく、エンターテインメントショーであることの何よりの証明だ。スポーツとして確立されれば、それを守るために尽力する人が数多く出てくると思う。もうけることが第一義の興行なら、もうからなくなったら見捨てられるだけだ。

谷川、笹原両プロデューサーもリップサービスだったかもしれず、記者の誘導尋問で答えたのかもしれないから、目くじらをたてるほどのことではないかもしれない。だが2人のこれまでを見ていると、芸能人をデビューさせるなど格闘技として「?」がつくことが多かった。

プロである以上、話題づくりを否定しない。K-1の前プロデューサーの石井和義氏も、その手法でK-1をメジャーに育てた。しかし空手家でもあった石井氏には、格闘技の本質を守る意識があったように感じる。今はそれがない。

競技性を前面に出してスタートした「戦極」もとん挫した。ボクシング、相撲に続くプロスポーツとしての格闘技の確立は、やはり無理なのかなあ。(格闘技ライター・樋口郁夫)