日本人の世界王者が聖地ラスベガスのメーンに登場し、将来の殿堂入りほぼ間違いなしの超有名な強豪挑戦者を退ける。10月1日、この快挙をやってのけたWBC世界スーパーバンタム級王者・西岡利晃(帝拳)により、我が国のボクシング史に待望の新たな「史上初」が書き加えられることとなったが、10月14日には、地中海に浮かぶ「真珠の島」、マルタ共和国でも、記念すべき「史上初」が同国のボクシング史に刻まれようとしている。

聖ヨハネ騎士団の牙城として知られるマルタだが、島の防衛拠点であった聖エルモ砦は、映画「ミッドナイト・エクスプレス」の撮影場所としてもまた有名かもしれない。今年6月、ダブリン開催のEBU(欧州ボクシング連合)総会で、マルタ・ボクシング・コミッションの加盟が賛成多数で認められ、この9月に同コミッションがプロ・ライセンスを交付した最初のボクサー2名が、初めて「公式試合」のリングに立つ歴史的な日が10月14日なのだ。

1964年に独立するまで、近代ボクシングの発祥国の英国の統治領であったマルタだから、同国最初の拳闘試合は早くも19世紀終わりに確認されており、以降、途切れることなく人口約36万人のこの小国で「非公式」とはいえ、興行が行われてきたわけなのだが・・・

1993年には承認料未払いでアマがAIBA(国際ボクシング協会)から追い出されるなど未曾有の危機に陥った。格闘技熱の高まりで、ここ数年は元英連邦ウエルター級王者の英国人スコット・ディクソンが「インターナショナル地中海王座」等、個人でお手盛りの王座を新設して興行を主催。一部で「カリスマ的」人気を誇っていた。しかし、一昨年にはAIBAに再加盟を申請し、協会もディクソンを出入り禁止処分にするなどマルタのボクシングは、正常化に向かって着実に歩を進めていたのだ。

記念すべき14日のセント・ポールズ湾でのメーンは、「IBOインターナショナル」と「WIBA女子」の2大王座戦。マルタ人の絡まない外国人同士の対決だが、マイナー王座戦とはいえ実現されることで、その向こうに待つ「広大な世界との繋がり」を同国のファンが実感できる幸福感は、さらなるビッグマッチも非現実ではなくなった西岡の勝利に沸く日本のファンであれば、なおのこと理解できるはずでは。(草野克己)