ボクシングのWBCウエルター級タイトルマッチが9月17日、米ラスベガスで行われ、挑戦者のフロイド・メイウェザー(米国)が4回KOで王者ビクター・オルティス(米国)を破り、新王座に就いた。持ち味のスピードは相変わらず圧巻で、メイウェザーの強さ、巧さが際立った。これで来年5月にも予定されるスーパースター、マニー・パッキャオ(フィリピン)との「世紀の対決」が現実味を帯びてきた。

メイウェザーには驚くしかない。オルティスは強打のパンチャーとして知られ、王者有利とする専門家もいたほど。しかし、メイウェザーはスタートから左を間断なく繰り出し、ディフェンスも万全。堅いガードを崩すのは容易ではなく、オルティスは一発のクリーンヒットを与えられない。

4回、試合は大きく動いた。パンチが思うように当たらず、オルティスには焦りの表情が浮かんだ。ラウンド後半、王者はコーナー際で頭突きの反則。減点を取られたが、これがメイウェザーの闘志に火を付けた。ファイティングポーズを十分に取っていない相手に対し、左フックから右ストレートを顔面にたたきつけると、王者はたまらずダウン。ダメージは深刻で、そのままカウントアウトされた。しかし、自分に非があるためオルティスは敗戦を認めるしかなかった。

確かに後味の悪さは残った。だが、レフェリーは試合再開の意思を示していた。ここはメイウェザーより、ボクサーから目を離したレフェリーのお粗末さを挙げておきたい。リング上でレフェリーの権限は絶大。それだけに一瞬の気を緩みも許されない。試合後のインタビューで問題のシーンをしつこく質問され、メイウェザーは珍しく会見を拒否したほど。レフェリングの拙さも指摘されていたら、その態度は変わっていただろう。

いずれにしろメイウェザーが異次元のスピードを披露したのは確かだ。そして、ファンの関心はパッキャオとの激突に尽きる。パッキャオは11月、ファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)とグローブを交えるが、勝利の可能性は大きい。その後、両雄はもう対決を避けられないだろう。

果たして、歴史を塗り替えてきたパッキャオの勢いを止めることができるのか。メイウェザーはデビュー以来、不敗の42連勝(26KO)を続けている。傑出した安定感を支えているのは「誰よりも練習している」と豪語する努力かもしれない。専門家の間では、「パッキャオの強さは分かっているが、あのスピードにはついていけない」という見方が多いのも事実。今からゴングが待たれる。(津江章二)