「ありがとう、川島永嗣」といったところだろうか。

タシケントで行われたワールドカップ(W杯)アジア3次予選。先日の北朝鮮戦と同じくスコア的には接戦だったが、内容は大きく違った。負けていてもおかしくない内容。それを考えれば、1-1のスコアは妥当な結果だろう。

▽タイトルは良いGKとともに

サッカーには「タイトルは良いGKとともにある」という格言があるが、この試合の川島は、まさに良いGKだった。特に後半17分にカパーゼ、23分にジェパロフがそれぞれ抜け出した1対1の場面で、冷静にシュートコースを限定してストップ。

あの場面は、ダイビングに比べれば派手さはないが、スーパーセーブといっていい美技だった。もしこのプレーがなければ、日本代表は重い足取りで帰国の途につかなければならなかったろう。

▽アジアの数カ国は紙一重

W杯のベスト16。アジア・チャンピオン。その肩書きは、もはやそれほどの大きなアドバンテージではないのだと気付かされた。

この日、同点ゴールの岡崎慎司は試合後に「納得はしない。もっと圧倒して勝ちたい」と語っていたが、少なくともアジアの数カ国は日本と紙一重の実力差にいると思えた。そのひとつが1月のアジア・カップで4強に入った、今回のウズベキスタンだろう。

▽浮き彫りになった問題点

アジアの戦いでは、日本を相手にする場合、多くのチームが守備的な戦術を敷いてくる。だが、ウズベキスタンは違った。ホームということもあるのだろうが、ガンガン攻めてきた。

中立的な立場で見れば、両チームともに決定機があり、飽きのこない面白いサッカーだ。そして、このウズベキスタンの積極性のおかげで、これまであまり露呈していなかった日本の弱点というのも浮き彫りにされた。守備面に大きな問題があったといえる。

▽本大会なら大量失点も

あまりにも簡単にサイドからのクロスを入れさせてしまう。これがウズベキスタンだったからまだよかったのだが、一流のストライカーがいるW杯の本大会で、このような守り方をしていたら大量失点を喫するだろう。

特に内田篤人の右サイドはあまりにも無防備だった。守備というものを考えた場合、南アフリカ大会で岡田武史監督が、駒野友一を右サイドにファーストチョイスした理由が理解できた。

▽ワンランク上の贅沢を

確かにサイドバックというのは、現代サッカーでは最も多くの要素を求められるポジションだ。攻守に渡り、全力での激しい上下動を繰り返す体力、守備の安定感、さらに攻撃時のクロスの質。そのすべてを備える選手は、世界を見回してもそう多くはない。

しかし、すべてを求めてしまうのが、贅沢なファン心理。内田自身の最大の持ち味は、この日の同点ゴールを生みだした攻撃力。これに守備力がつけば、さらにワンランク上の選手になると思っている人も多いだろう。

▽監督の手腕の見せ所

課題という意味では、右ヒザの手術でチームを離れた本田圭佑の穴をどう埋めるかという問題も浮き上がった。

北朝鮮戦も含めて相手ゴール近くでの「間」をかせぐ存在が見当たらない。相手の激しい当たりにも動じず、確実にボールをキープできる本田のようなプレーヤーがいるかどうかで、攻撃の厚みはかなり違ってくる。

それに代わる存在を個で補うのか、それとも戦術で解決していくのか。いずれにしてもザッケローニ監督の手腕の見せ所だろう。

▽苦しんだ分、価値ある一戦

勝つに越したことはない。だが、まだW杯予選は始まったばかり。長い道のりを考えれば、課題の見つかった試合は逆に次の進歩につながるのではないだろうか。その意味でアウエーのウズベキスタン戦は、価値のある一戦となった。

▽悪いピッチも含め「W杯予選」

この20年、選手は確実にうまくなり、チームも強くなった。さらに日本の進歩は、これ以外にもある。

日本国内のスタジアムのピッチの良さだ。タシケントのパフタコール・スタジアム。さらに、なでしこジャパンが戦っている中国・済南のスタジアムも、さかんに「ピッチが悪い」と繰り返される。

しかし、思い起こせば、1990年のW杯イタリア大会の予選が行われた東京・西が丘サッカー場のピッチには、芝生がほとんどなかった。対戦するインドネシアからは大きなクレームが出た、ということもあった。

それを考えれば、試合が常にベストのピッチで行われるとは限らない。特にアウェーは。日ごろ、恵まれた環境が当たり前と思っている日本の選手たちには、「ピッチも含めてW杯予選」という心構えを持ってほしい。サッカーの内容に多少の影響はあるだろうが、相手も同じ条件で戦っているのだから。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている。