珍しいというか、稀に見る混戦となっている。1シーズン全38試合を戦うJ2は、22試合を終えた8月28日現在、J1昇格圏となる3位以内にFC東京、徳島ヴォルティス、栃木SCの3チームが入っている。

全勝していれば66ポイントを得られる中で、3チームの勝ち点はともに41。得失点差で順位を分け合う、という激戦が続いている。

▽実力伯仲、面白くなったJ2

昨年、ダントツの最下位に沈んだギラヴァンツ北九州の躍進、J1から降格した湘南ベルマーレ、京都サンガの苦戦…。

混戦にはさまざまな要因があるが、ひと時の上位と下位の実力差が明らかだった頃と比べて、今年のJ2は各節のリーグの順位動向から目を離せないという意味で、かなり楽しい。

▽1部昇格プレーオフ?

ところでこのJ2のリーグ戦について、18日にJリーグ側から新しい発表があった。2012年のシーズンからJ1昇格プレーオフ(仮称)を行うというのだ。

現在、J2からJ1に昇格できるのは、リーグの年間順位上位3チーム。このシステムが来年度から変わるという。

リーグの3位チームは6位のチームと1試合の準決勝を行い、もうひとつの4位と5位の準決勝の勝者と中立地で一発勝負の決勝を行う。それで3つ目のJ1昇格チームが決まるというのだ。

▽積み上げたものが水泡に

確かにJリーグ側からすればシーズン最後の注目を集めるという思惑はあるだろう。ある意味で“無責任"にもなれる観客からすれば、緊張感のある試合を見ることができて楽しいともいえる。

しかし、当事者となる監督や選手からすればこんな不条理なことはない。特にリーグ3位のチームにとっては、1年の期間をかけて積み上げてきたものが、すべて水泡に帰す可能性があるのだ。たまたまその試合の時期に不調だったために、である。

▽「勝ち点1」の重み

プレーオフの噂が出始めた頃、元Jリーグの監督と話す機会があった。そこで聞かされたのは「勝ち点1」の重みだった。

「現実的にチーム力を比べた場合、勝ち点3(勝利)を収めることは限りなく難しいという相手がいる。その相手と戦うために1週間の入念な準備をして、勝ち点1(引き分け)の結果を収めたときの充実感はすごい」。

この言葉の意味を考えると、プレーオフは現場の1年間の努力を、完全に無視した“お上主導"の悪法といえるだろう。

▽いずれ不満の声が

そして、まだ当事者が出ていないから不満の声は上がってはいないが、いずれそのような声は出てくるはずだ。

J2で3位になってもプレーオフで敗れれば、解任される監督も出てくるだろうし、選手もまた然り。さらにサポーターの間からも「何のためのリーグ戦だったの?」という疑問が、当然湧いてくるだろう。

▽リーグ戦はあくまで公平に

リーグ戦は、どこの国においても最も価値のあるタイトルだ。だからこそ、どのチームに対しても公平で、普遍のものであり続けなければならない。

1993年に2ステージ制でスタートしたJリーグが2005年から1ステージ制になったのも、そもそもは年間を通してのチームのパフォーマンスを正当に評価するために、ではなかったのか。

1999年のJ1優勝は、清水エスパルスをチャンピオンシップでPK戦の末に下したジュビロ磐田だった。

ところが年間勝ち点では清水の65に対し、チャンピオンの磐田は50。この数字に多くの人が違和感を持ったものだった。

▽システムにも疑問

プレーオフのシステムにおいても疑問は残る。6位と対戦する3位、5位と対戦する4位は準決勝をホームで戦える。だが、そもそもホームとアウェーで圧倒的に勝率の差がでる海外とは違い、Jリーグではホームの利というのはあまり感じられない。

それは例えば、J1の大宮アルディージャが秋風の吹き始める第24節に、やっと今シーズンのホーム初勝利を挙げたことからも証明されている。

▽年間順位の「耐えられない軽さ」

さらに「年間順位の優位性を確保するために、引き分けの場合は年間順位の上位チームを勝利扱いとする」というルールにも違和感が残る。

年間を通して積み上げてきたものが、それぐらいのアドバンテージにしかならないのかと思ってしまう。3位と4位で勝ち点が10離れている可能性だってあるのだから。

それだったら、いっそのことプロ野球のクライマックスシリーズのように、上位チームに1勝のアドバンテージをあげて、先に2勝したものが勝ちみたいなシステムにしたほうがいいのではないだろうか。

▽日々の努力を軽んじる風潮

この頃の日本は、日々積み上げてきた努力が、必ずしも認められるとは限らない風潮が出てきた。だからこそ、スポーツのリーグ戦だけは正当であって欲しい。

一発勝負のワクワク感を得たいのならナビスコカップや天皇杯のトーナメントがあるではないか。Jリーグ側は、そういった部分も踏まえ、プレーオフ制度について改めて見直すべきだ。

日ごろ、一般的には脚光を浴びないJ2でも、その現場には生活のすべてをサッカーに懸けて、飯を食べている監督や選手がいるのだから。

▽その時、納得できますか?

2012年の冬、あなたのサポートするJ2クラブがリーグ3位にならないことを願っている。

もしかして、愛するチームは優勝チームと同じ勝ち点かもしれない。得失点差で3位になってのプレーオフ。そこでの悲惨な敗戦。あなたはそんな状況に納得できますか?

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている。