今年からドゥカティへ移籍したバレンティーノ・ロッシが低迷を続けている。シーズン折り返し地点の第9戦ドイツGPは、キャリア250戦目という節目のレースだったが、予選は最後尾から2番目の16位という惨憺たる位置から決勝レースを迎えることになった。

モトGPで7回、125CCと250CCでも各1回チャンピオンを獲得してきたイタリアのスーパースター、ロッシが、同国企業ドゥカティのマシンに乗るのは、イタリア人の夢だった。シーズン序盤は昨年来長引かせている肩の負傷にも悩まされていたものの、体調が戻った後も、ドゥカティが抱える根本的な問題は解決せず、ロッシの成績は好転する気配を見せなかった。

マシン開発が望む方向へなかなか進まないために、フラストレーションの溜まるレースが続いたが、第8戦のホームグランプリ、イタリアGPでは何としても好結果を得たい、という目的から、その一戦前の第7戦オランダGPでチームはロッシ用に特別なマシンを用意した。ドゥカティのマシン<デスモセディチ>は、今年度仕様のマシンに西暦の末尾をとってGP11、ルールが変わる来年用にはGP12という名称が使用されている。GP12は本来、来年からの規定である1000CCのエンジンを搭載することが想定されていたが、ドゥカティ陣営は今年のルールに適合するよう改良型の800CCエンジンを搭載し、急遽、第7戦に投入した。

現状のGP11よりも高い性能を期待されたマシンは、GP11・1と名付けられた。だが、思ったような結果を獲得できず、肝心のホームグランプリ、イタリアGPは予選12位、決勝6位という苦しいレースに終わった。続く第9戦のドイツGPでは、予選を終えて最後尾から2番目の16番手という目を覆うような有様。決勝レースでは少しずつ順位を上げていったものの、上位争いからはほど遠い走りで、結果は9位。

もともと1000CCのエンジンを想定して製作された車体だけに、「800CCエンジンでは、このマシンをうまく走らせることはできない」とロッシ自身もお手上げ状態。まさに迷走というほかない状況が続いている。

第10戦のアメリカGPでは、いったん投入したGP11・1を破棄してGP11に戻すことも考慮したが、最終的にはGP11とGP11・1を両方持ちこんで実戦で比較検討することにした。ロッシに近いあるイタリア人関係者は、この状況を指して「完全な混乱状態で最悪の状況」と顔をしかめる。

両仕様の性能に、はたしてどれほどの差があるのか。あるいは仕様の差違ではなく、今のデスモセディチの設計思想そのものが根本的な問題を抱えているのか。真相は、7月22日(金)に始まるアメリカGPで、おそらく明らかになる。(モータージャーナリスト・西村章)