U―22(22歳以下)日本代表が突破を決めたサッカー男子のロンドン五輪アジア2次予選で、23日のU―22クウェート代表との試合で笛を吹いたのは、アジアで最高といわれるウズベキスタンのラフシャン・イルマトフ主審だった。2008年から3年連続でアジア・サッカー連盟(AFC)の最優秀主審に輝き、2010年ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会では準決勝のウルグアイ―オランダなどで主審を務めた有名な審判員だ。

23日の試合では開始直後、相手選手が日本のペナルティーエリア内で反則を受けたように見せかけて倒れた場面があった。スタンドの観客は「PKだ!」と叫んだが、イルマトフ主審は毅然とした態度で、クウェート選手のシミュレーションの反則を取った。日本にとってアウェーの一戦だったが、試合を通じて偏りのない判定を主審が下したことを象徴するシーンだった。

試合の翌日、クウェートの空港で偶然イルマトフ主審と出会った。試合の「お礼」を伝えようと話しかけた。すると彼は「最終予選進出、おめでとう」「主審として、もうアジアのすべての国で笛を吹いたんじゃないかな」「日本に地震や津波がもう二度とないことを祈っている」と話してくれた。183センチと長身の33歳は、余裕を感じさせる物腰で初対面の私に応じてくれた。以前ウズベキスタンを取材で訪れた際、イルマトフ主審が携帯電話のテレビコマーシャルに出演するなど高い人気があったのを思い出した。

サッカーはミスがつきもののスポーツだ。それはプレーだけでなく判定についても言えることだ。W杯南アフリカ大会ではイングランドのランパードがドイツ戦で完全にゴールラインを越えたシュートを放ったにもかかわらず、得点が認められなかった。サッカー界は追加審判員を配置したり、ゴール判定を補助する先進技術の導入を検討したりするなど誤審撲滅のために動いている。

サッカーの審判員には試合後取材ができず、野球や大相撲のように判定についての説明の場もない。空港では、お土産用に子供服の品定めをしていたイルマトフ主審。ピッチを離れて「素顔」に触れたことで、あらためて選手だけでなく、彼らもまた重圧と戦っているのだろうという思いに至った。

土屋 健太郎(つちや・けんたろう)1979年生まれ。千葉県旭市出身。2002年に共同通信入社、12月から福岡支社でソフトバンクなどを担当。07年1月から東京本社でサッカー、大相撲、バレー、バスケットボールなどを担当。