モトGPの日本開催を巡る状況が紛糾している。栃木県のツインリンクもてぎで行われる日本GPは当初、4月24日決勝の第3戦が予定されていたが、東日本大震災の影響により、10月2日決勝の第15戦へと延期された。5月中旬に行われたフランスGPの際には、レースを運営するDORNAスポーツ社CEOのカルメロ・エスペレータ代表が選手たちに対して「開催する方向で検討中」と話し、これが大きな論議を呼ぶことになった。6月5日に決勝レースが行われた第5戦カタルーニャGP段階でも結論は出ておらず、それどころか選手たちの「今年は日本GPを見送ってほしい」という意向は日を追うに従ってむしろ強固になっているようにも見える。

決勝レースに先立つ金曜夕刻には、毎回、選手や関係者の有志が集まってレースやコースの安全性などを協議するセーフティコミッションが行われる。カタルーニャGPでも日本開催の是非が大きな話題になった。運営側は原発事故による、もてぎや周辺都市の水戸などの放射線レベルが充分に低いことを数値資料とともに説明したものの、選手たちからの充分な理解は得られなかったようだ。現チャンピオンのホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)は「チェルノブイリの25年後をレポートするスペインの番組を見た。日本政府に限らず、あらゆる政府の言うことは信用できない。おそらく99パーセントの選手が、日本に行きたくないという僕の考えに同意してくれると思う」と語った。また、パドック内で大きな発言力を持つバレンティーノ・ロッシ(ドゥカティ)とも、その方向で<共闘>していることを認めた。そのロッシは、「日本GPの是非を決断するのは、まだ時期尚早だと思う。第三国・第三者の客観的レポートを待ってから判断しても遅くない」と、ロレンソとはやや異なるトーンながら、現状では日本のレース開催に乗り気がしないという意味では同じであることを認めている。

また、今回のカタルーニャGPで優勝した・ストーナーも「今の日本は、レース開催よりも優先するべきことがあるはず」との表現で婉曲に忌避感を表明している。

選手たちのこのような反応を受け、FIM(国際モーターサイクリズム連盟)会長ヴィト・イポリトは、数週間内にDORNAと共同で第三者機関に依頼してさらなる調査を実施し、その結果に基づく情報公開を行う予定であることを明らかにした。この調査結果は、選手だけではなく全パドック関係者にアクセス可能にする予定だという。また、イポリトは、12月に日本でサッカーのクラブワールドカップを行う予定のFIFAや、日本GP予定日の翌週に東京で世界体操選手権を行うFIG(国際体操連盟)等の団体とも連絡を取り、安全性の情報交換を行う予定だとも話した。

日本GPの行方は現在も判然としないが、結論が開催・中止のどちらに転ぶにせよ、その判断は誤解や拙速な思いこみを可能なかぎり排除した、客観的かつ冷静な根拠に基づいたものであることを願いたい。(モータージャーナリスト・西村章)