新潟の東北電力ビッグスワンスタジアムで行われた雨中のペルー戦。日本代表にとって収穫は、負けてもおかしくなかった試合を、0-0の引き分けで終えたことだろうか。

▽重要な意味づけのキリンカップ

9月のワールドカップ(W杯)3次予選まで、残された強化試合は3試合。東日本大震災の影響で、7月に招待されていたコパ・アメリカ(南米選手権)の出場を辞退することになり、日本代表の強化プランは大きく狂った。その意味で今年のキリンカップは、いままで以上に重要な意味を持つことになった。

FWピサロ(ブレーメン=ドイツ)、MFバルガス(フィオレンティナ=イタリア)といった一部の有名選手は抜けてはいるものの、ほぼベストメンバー。UEFAチャンピオンズリーグ(欧州チャンピオンズリーグ)でも活躍した内田(シャルケ=ドイツ)のチームメート、ファルファンを1トップに置くペルーは、FIFAランキング54位ながら、対戦相手としては非常にいいチームだった。

時に来日チームのなかには、観光気分の「なんちゃって代表チーム」もあるが、今回のペルーは来月にコパ・アメリカを控えているために、日本と同様にこの一戦を重要な強化試合をとらえて戦ってくれた。

▽足りなかった準備期間

準備期間がわずか2日で、欧州組の長友、本田、吉田らが前日に合流したばかり。コンディショニングに問題のある選手の多い日本代表は、国内組を中心にメンバーを組んだ。初召集の鹿島の西を先発させるなど、1月のアジアカップ制覇のチームと比べれば、お互いの持ち味の認識に乏しい選手たちを起用したことで、チームとしての機能は決してよくはなかった。

しかもフォーメーションは、これまでほとんど試したことのない3-4-3。ACミラン時代にザッケローニ監督が大きな成果を残したシステムだが、2日間の練習でこれを習得させるには無理があった。システムにとらわれすぎて、選手個々の持ち味を発揮できない。ザック監督の思い描く「システムを柔軟に使い分ける」チームとなるには、もう少し時間がかかりそうだ。

▽日本に欠けた「エゴイズム」

思い切りに欠け、見せ場も少なかった前半に比べ、本田を投入した後半は試合にリズムが戻った。慣れ親しんでいる4-2-3-1システムということもあり、動きが滑らかになった。トップ下にボールを確実に収めることのできる本田がいたことで、本田にボールが入った瞬間に周りの動き出しが早くなったからだ。

それでも「試合を決める」となったときの迫力は、残念ながらペルーの方が一枚上だった。点を取るということに関しての執着心は、南米人の方が強いみたいだ。点にはならなかったが、後半41分、44分とルイディアス、ラミレスが連続してポストを直撃するシュート。GK川島のファインセーブで失点には至らなかったが、どうしても勝ちたいというときに、南米人はエゴイストになる。逆に日本人に一番欠けるのが「一人でもやってやる」という気構えだ。

▽際立ったU22永井の執念

日本人にしては比較的「エゴイスト度」の高い本田も「いつもとは違うメンバーが多かったので共通理解がなかった」と組織での課題を話したが、日本のシュートが5本では観客も楽しめなかったはず。それを考えれば、この試合の前に行われたU22(22歳以下)の日本-オーストラリアのほうが、まだ見応えはあった。

内容はともかく、ゴールを奪ってやろうという姿勢が違う。そういえばオーストラリアを相手に2得点1アシストをした名古屋のルーキー永井は、幼い頃をブラジルで過ごしたという。永井がエゴイスト? そういうことはないだろうけれど、ゴールに対する執念では「南米人」なのかもしれない。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている。