大リーグのレッドソックスとプロ野球阪神のファンには、共通点が多いと思う。

第一に「三度の飯より野球が好き」ということ。常に満員の甲子園球場と同様、フェンウェイ・パークはジェット風船こそ飛ばないが、2003年からチケットの完売記録が続く。どちらも古い歴史と伝統を誇り、来年で100周年を迎えるフェンウェイの赤れんが造りの壁は、つたの絡まる甲子園に似て味わい深い。

一度聞いたら忘れない「六甲おろし」に対して、ボストンでは八回に、ニール・ダイヤモンドの「スイート・キャロライン」で声をからす。さびの部分で「オッ、オッ、オー!」と合いの手を入れる。

倒すべき相手がはっきりしているのも、そっくりだ。阪神ファンがアンチ巨人に通じるのと同じで、ヤンキースに対する激しいライバル意識をむき出しにする。阪神でプレーし、昨季はレッドソックスに所属したアッチソン投手は「たしかに両方のファンは似ている。情熱的で、野球をよく知っている。客席の雰囲気がエネルギッシュで独特なのも同じだ」と話してくれた。

それだけ入れ込んでいるから、不調の時は手厳しい。レッドソックスは今季、開幕6連敗の苦しいスタートを切った。心理学的に「怒り」の大きさは「期待」の大きさに比例するものらしいが、大型補強で優勝候補と見られたチームのふがいなさに、ファンのフラストレーションは一気に高まった。

そして不幸にも、その矛先は不振を極めた松坂大輔投手に向けられた。4月11日の今季2戦目は、3回も持たずに7失点。本拠地のマウンドなのに、交代が告げられると歓迎の大拍手が起こり、ベンチに下がる背番号「18」に容赦ないブーイングが浴びせられた。地元メディアは一斉に「打撃投手のようだ」「トレードすべき時が来た」などとこき下ろした。さすがの松坂も「自分のマイナス面をいろいろ見たり、聞いたり、言われたりすることで考えることはあった」と後日打ち明けている。

そこで落ち込むだけで終わらず、むしろ力に変えてしまうのが一流選手だ。「これが駄目なら次はないと思った」と背水の覚悟で臨んだ18日のブルージェイズ戦は、7回1安打無失点で今季初勝利。続く23日のエンゼルス戦は8回を1安打無失点、9奪三振の完璧な内容で雑音を封じた。2試合続けて7イニング以上を、1安打以下に封じたのは球団史上3人目。02年に剛腕ペドロ・マルティネスが記録して以来だという。「DICE―K」の快投は、地元ボストンのファンだけでなく、番記者にとってもうれしい復活劇となった。

木村 壮太(きむら・そうた)1973年生まれ。横浜市出身。97年入社後、相撲、プロ野球(オリックス、阪神、横浜)、モータースポーツなどを取材。2007年からボストンに駐在し、レッドソックスを担当。