90分間という限られた時間を、一人の日本人は最高に楽しみ、もう一人の日本人はチームの一員の役割を果たしながらも、自分の存在感を表現した。4月13日にドイツのゲルゼンキルヘンで行われたUEFAチャンピオンズリーグ(欧州チャンピオンズリーグ)準々決勝の第2戦は、まさにそのような試合だったのではないだろうか。

いまやワールドカップ(W杯)のレベルをはるかにしのぐといわれるチャンピオンズリーグ。その夢の舞台で、これまた夢のような日本人対決が実現した。イタリアのインテル・ミラノの長友佑都と、ドイツのシャルケに所属する内田篤人の対決だ。

▽世界のトップにも見劣りせず

勝負は、ミラノで行われた第1戦でついていたといっていい。内田のシャルケは、昨年12月のクラブワールドカップを制した「世界王者」を相手にアウエーで5-2の大勝。ホームでの第2戦で4点差をつけられない限り、1-4までの敗戦は許される状態。W杯以降、さらに実力を蓄えたドイツ代表GKノイヤーが、4度もゴールを破られるとは思えなかった。

自然と注目は、サイドの位置でマッチアップする内田と長友の対決になったのだが、これが世界的スター選手のなかにあっても、少しの見劣りもしなかった。というよりも、この2人の機動力は、世界でもトップランクに位置するのではと思わせる攻防だった。

▽新たな次元へ誘う両翼

数年前、元日本代表のジーコ監督が、「現代のサッカーで最もタフでなければいけないのは、サイドバックだ。しかし、それに適した人材はそう簡単には見つからない」といっていた。ところが、この2人は守備をベースにしながらも、果敢に相手ゴールライン付近まで攻め込み、さらにボールを奪われると自陣まで戻る能力を持っている。

こんな能力を備えているのは、1990年W杯を制した元西ドイツ代表(当時)のブレーメや、ブラジル代表のカフー、ロベルトカルロスだけだと思っていた。この2人はその域にまでは達してはいないものの、少なくとも日々理想の域に向かって進歩をしていることは間違いない。

これまで欧州の舞台で活躍してきた日本人選手は、ほとんど中盤の選手だった。しかし、現代サッカーでは中盤の選手だけで攻撃を組み立てることは非常に難しい。最も効果的なのはサイドからの攻撃。その両翼となる、右の内田、左の長友を持った日本は、新たなサッカーの次元に突入するのではないだろうか。

▽長友の起用法にも再考?

この夜、再び内田のシャルケはインテルに2-1の勝利を収めた。最高の舞台で気楽に自分のサッカーを表現できた主力の内田にとっては、これほど楽しいことはなかったろう。一方の長友も敗れたとはいえ、自慢の走力と強さを十分に発揮した。

イタリアでは「長友をレギュラーに」という声も起こっているという。いつも退場になって、出場停止で長友に出番を回してくれるキブには悪いのだが、日本人とすれば、左サイドバックには「そろそろ本職の長友を」と思うのもしょうがない。そして、UEFAチャンピオンズリーグの連覇が途切れたことをきっかけに、レオナルド監督も長友の起用法を再考するような気がしてならない。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている。