4月8日、神戸で行われたボクシングのトリプル世界戦はいずれもKOで決着がつく熱戦の連続だった。中でも6度目の防衛に成功したWBCスーパーバンタム級チャンピオン、西岡利晃(帝拳)は内容のある9回KO勝ちを収め、次期防衛戦で念願の米ラスベガスの地を踏む可能性が大きく膨らんだ。

挑戦者のマウリシオ・ムニョス(アルゼンチン)はやりにくい相手だった。変則のファイターで、パンチがどこから飛んでくるか分からない。大振りではあるが、左右の拳には一打KOの威力を秘めている。実は戦前、西岡には不安材料があった。練習中に左手を痛め、満足なコンディションではなかった。序盤に再度痛めたら大変なことになる。そのため、慎重かつ冷静に試合を進めた。

9回、チャンスが来た。右目の視界を失いかけた相手に一気のラッシュを敢行した。手の痛みを感じさせないような詰めを見せ、最後は得意の左で鮮やかに決めた。タフなムニョスも観念したかのように敗戦を素直に認めた。「ニシオカは最強の王者だった」。相手からそう称賛されるのも珍しい。東日本大震災の影響は全国各地に及んでいる。「日本人の精神力の凄さを証明したかった」と西岡。頼もしい王者である。

名門帝拳ジムはこれまで数多くの世界王者を生んできたが、最長防衛は大場政夫の5度。今回はその記録もクリアした。大場といえば「逆転の貴公子」と呼ばれたほど、スリル満点の試合で人気を集めた。西岡も常にファンの熱い視線を浴びている。「モンスターレフト」と表現される左強打がスリリングな結末を演出する。

その男が本場ラスベガスで防衛戦を行えば、興奮度は最高潮に達するだろう。ラスベガスといえば、近年でも無敵マニー・パッキャオ(フィリピン)、天才オスカー・デラホーヤ(米国)らが歴史的なファイトを展開している。あの舞台で日本のエースがどのようなボクシングをするのか。想像するだけでワクワクしてくる。

対戦相手としては早くも前WBCバンタム級王者フェルナンド・モンティエル(メキシコ)らが候補に挙がっているという。西岡の戦績は38勝(24KO)4敗3分け。KO率が5割を超える強打で本場のファンをうならせてほしい。実現が待たれる。(津江章二)