二輪ロードレースの最高峰、モトGPのスペイングランプリは毎年、イベリア半島最南端に位置するアンダルシア地方のヘレスサーキットで開催される。当地のレースは、いつもなら温暖な気候と穏やかな天候に恵まれて絶好の観戦日和となるが、今年は決勝日に雨が降った。ヘレスのウェットレースは2004年以来7年ぶりだ。土曜までのドライコンディションが日曜の朝に突然ウェットに切り替わるという難しい状況で、各チーム各ライダーは慌ただしいセットアップ変更を強いられた。

決勝レースはトップを走行する選手たちや中団グループで激しく順位を争う選手たちが次々に転倒。全17選手のうち8台が転倒する荒れた展開になった。優勝は、最後まで安定したペースを崩さずに走行を続けた2010年チャンピオンのホルヘ・ロレンソ(ヤマハファクトリーレーシング、スペイン)。日本人選手の青山博一は、表彰台を惜しくも逃したものの自己ベスト記録の4位でチェッカーを受けた。

土曜午後の予選序盤に転倒し、マシンと接触して左膝を捻ってしまった青山は、鎮痛剤を服用して決勝レースに臨んだ。一瞬の判断ミスが転倒に繋がる難しい状態のレースで、青山は最後まで慎重な中にも攻めの姿勢を崩さない走りを貫いた。レース中盤の集団から抜け出すことに時間を割かれてしまい、最終ラップの最終コーナーでは3番手の選手を目の前まで追いつめたものの、先にゴールするまでには至らなかった。「くやしいな~。うれしいけれどもくやしい」と青山。

「今回は精神戦のレースでしたね。最後の数周は目の前のニッキー(・ヘイデン、ドゥカティ)に追いついて、諦めたら4位、諦めなければ3位が見える状態だった。諦めずに狙ったけれども、少し無理をしたら転んでしまう状況だったので、どこまでリスクを冒して追いついていくかという判断が難しかった。最終コーナーの進入でイン側につくことができれば立ち上がりで前に出られたと思う。あと一周あれば間違いなく彼をパスできていただけに、余計悔しいけど、これを次のレースに生かしたいと思います」

土曜の予選で脚を負傷して周囲をヒヤリとさせたものの、そのような体調でも百戦錬磨の選手たちが次々と転倒する難しいレースを4位で終えたのだから、今回の結果は上々といっていいだろう。この悔しさと自信が、1カ月後のポルトガルGPでさらに大きな実りを結ぶことを楽しみにしたい。青山の気迫に満ちた走りは、震災からの復興を目指す日本の人々を、必ずや力強く勇気づけるはずだ。(モータージャーナリスト・西村章)