二輪ロードレースの最高峰モトGPには、ホンダ、ヤマハ、スズキの日本企業とイタリア企業のドゥカティが参戦している。ホンダ、ヤマハ、ドゥカティはいずれも、メーカー直系のワークスチームと、メーカーからマシンを貸与されて戦うサテライトチームを抱えている。だが、スズキの場合は、ワークス体制のリズラスズキ・モトGPのみの1メーカー1チーム体制だ。そのリズラスズキも、昨季までは他陣営同様に2名の選手を擁する陣容だったが、今年はスペイン人選手のアルバロ・バウティスタ1名だけのチームになった。2008年のリーマンショック以降、モトGPのパドックではどのチームも厳しい運営を強いられているが、スズキの場合はチーム規模の縮小でさらなる不況への対応を狙った格好だ。

そのバウティスタは、2月上旬にマレーシア・セパンサーキットで行われたプレシーズンテストで初日6番手、2日目8番手、と好調なスタートを切った。が、3日目は体調不良を訴え、テストライダーの青木宣篤が引き継いだ。

今回のテストについて、今季からチームの技術監督を務める河内健は「3日目にアルバロは体調を崩して走れなくなったが、二日間で結構なテストアイテムを消化し、3日目には青木がメニューをクリアしてくれた。充分に手応えのあったテストでした」と振り返る。

現在のモトGPでは、1名の選手が使用できるエンジン数を年間最大6基まで、と規制するルールがある。だが、スズキだけは昨年の途中からこの制約を除外された。ある意味では屈辱的ともいえるこの措置について、河内は「シーズン終了後に検証したが、6基でも充分行けたと思う。今年はルールの適用除外を受けずにすむよう、充分に対応できる諸元でテストを重ねています」と説明する。また、ワークスチームの所属選手が1名だけ、という体制は、2名体制に比べてデータ収集量が半分になるため、マシン開発面で他陣営に後れを取ることも危惧される。これについては「たしかに1名体制のワークスチームは珍しいけれども、ひとりの選手の好みに集中して開発できるメリットを活かし、コンスタントにベスト5に入る結果を目指したい」と話す。

ところで、2012年以降はモトGPのマシン規定ルールが変わり、排気量は1000CCへ変更になる。どの陣営もマシンを新たに設計するわけだが、欧州の一部では、苦しい運営が続くスズキの参戦継続を危惧する声もある。

「来年以降のことに関してはまだ何も決まっていないので、確定したことは何も言えません。ただ、2012年以降のレギュレーションに対応したマシン開発は、すでに日本で着手しています」と河内。

現状では不利な戦いを強いられているのも事実だが、所属選手のオーダーメイドともいえる理想的な環境で存分に実力を発揮すれば、スズキを巡る不穏な噂はあっという間に雲散霧消するだろう。(モータージャーナリスト・西村章)