二輪ロードレースの世界最高峰モトGPでは、全チーム全選手がブリヂストンタイヤを装着している。2008年までは複数メーカー間で激しい競争が繰り広げられたが、次第に性能差が顕著になりはじめ、2009年からはブリヂストン一社がタイヤを供給する公式サプライヤーになった。<ワンメーク>の契約は3年。ここまでの2年について、同社モーターサイクルレーシングマネージャー・山田宏は「2009年のスタート時は、正直なところ多少の不安もあったけれども無事に終わった。2年目の去年は、より広い温度域やコース特性に対応して作動するワイドレンジのタイヤを投入し、さらにうまくいった。ワンメークでは、高品質のタイヤとサービスを公平に供給する<安全・安定・公平>が非常に重要な要素ですが、その点でもライダーや関係者から高い評価をいただきました」と振り返る。

複数メーカーが競争を繰り広げていた時代、多大な資源を投入して企業体力の続く限りしのぎを削りあう様子は、<タイヤ戦争>とも言われた。しかし、世の中の風潮は環境志向を強めてコスト効率性を重視するようになり、ロードレース界もその趨勢とは無縁ではいられなくなった。タイヤ戦争の時代からワンメークへと移り変わっていったのは、時代の要請といってもいいだろう。

他社との競争がなくなった現在、タイヤの効率的なレース投入で費用効率も大幅に向上した、と山田は話す。

「計画的な生産と運搬で効率が非常によくなりました。競争時代は、ライバルメーカーに勝つためにバイクや選手に合わせていろんな種類のタイヤを作っていたので、使わなかったタイヤもものすごく多かったのですが、今では製造したタイヤをほとんど使用しています。供給するライダーの数が倍になっても、全体のコストは削減できています」

ブリヂストンは、四輪界の頂点F1でも公式サプライヤーとしてタイヤを供給していたが、昨年限りで終了。今後、同社モータースポーツ活動のトップブランドイメージはモトGPが担っていくことになる。そして、今年は<ワンメーク>契約3年目。マシンの規則が変わる2012年以降も公式サプライヤーとして継続するかどうかに、大きな注目が集まっている。

「レースを主催するDORNAと参戦するオートバイメーカー各社からは、是非継続して欲しいという声をいただいています」と山田。「F1を辞めた今、モトGPまで終了すればブリヂストンからモータースポーツの印象がなくなってしまう。時代はエコロジー志向で、我々も環境を考慮した製品をたくさん出していますが、スポーツらしさや遊び心がなくなるのは、長い目でみると企業としても大きな損失。会社のモータースポーツイメージを保つためにも、今後も継続していくべきだと私は思っています」

山田のこの熱意は、関係者や選手たち、そしてファンの間でも、おそらく全員が一致して共有しているにちがいない。(モータージャーナリスト・西村章)