史上2人目の世界主要団体6階級制覇を達成したマニー・パッキャオ(フィリピン)は4月9日、米ラスベガスでティモシー・ブラッドリー(米国)を相手に引退試合となるウエルター級12回戦に臨み、大差の判定勝ちで有終の美を飾った。

1995年にプロデビュー以来、サウスポーからの圧倒的な攻撃力で世界ボクシング界の主役として歴史を彩ってきた。華麗で豪快、そして類いまれな突進力。「アジアの英雄」と評価された男の輝かしいキャリアはいつまでも語り継がれていくだろう。

ブラッドリーは決して楽な対戦者ではなかった。2階級を制覇したこともある実力者で、スピードが持ち味。しかもこれまで1勝1敗。しかし、引退を宣言しているパッキャオはラバーマッチ(3度目の対決)に負けるわけにはいかない。それなりのプレッシャーはあったはずだ。

初回から一進一退の攻防が続き、明暗を分けたのが7回。パッキャオは軽い右フックでダウンを奪ったが、このポイントがブラッドリーの焦りを誘った。

決定的なのが9回。パッキャオはショートの左アッパーで2度目のダウンを奪い、勝利に大きく近づいた。判定は3―0。3人のジャッジが揃って116―110と採点する完勝だった。

「彼はタフだったが、何とか生き残れた。フィリピン人のために辞める。引退? そうです」とリング上から引退を明らかにした。

今後は本格的に政治活動に専念する意向だ。仮にリオデジャネイロ五輪でプロ参加が決定した場合、パッキャオが出場する可能性は考えられるが、現時点でプロキャリアに大きなピリオドを打ったのは間違いない。

パッキャオの功績で驚嘆に値するのは「ボクシングは階級制(体重制)のスポーツ」という概念を切り崩したことだ。

フライ級からスーパーウエルター級まで、約20キロの壁をクリアしたことになる。さらに、6階級を達成したほか、オスカー・デラホーヤ(米国)、リッキー・ハットン(英国)らの超強豪とも積極的にグローブを交え、それぞれTKO、KOで破っている。スピードあふれた連打は圧巻の一言である。

昨年5月、最大のライバル、フロイド・メイウェザー(米国)と対戦、判定で敗れた。しかし、どのような強者とも闘った勇気は称賛に値する。通算成績は58勝(38KO)6敗2分け。ボクシング界の一つの時代が終わった。(津江章二)