今年のプロ野球は、ファンへの謝罪からスタートする異例の事態だった。

巨人4選手の野球賭博をはじめ、違法とされる闇スロットへの出入り、選手間で高校野球を対象にした賭けなど、自チームの勝ち負けで金銭をやり取りするなど不祥事の噴出が止まらなかった。

日本野球機構(NPB)の熊崎コミッショナーは、野球賭博の高木京投手に1年間の失格選手処分を下して球界復帰の道を開いたことで、復帰まで5年前後とされる「無期失格選手」の笠原、福田、松本竜3投手へも実質1年ほどで復帰できる可能性を示した。

▽禍根を残さないか

八百長とは違うのだから該当選手の復帰の道に異論はないが、昨年からのNPBの対応を見ていると、「徹底的にうみを出す」との言葉とは裏腹に、上からふたをしている印象はぬぐえない。

大昔から賭け事は人間社会に付いてまわってきた。勝負の世界に生きる選手たちが賭け事好きなのは分かるが、生計を立てている職種では自らを厳しく律する必要がある。そう教えられてきたと思う。

「罪を憎んで人を憎まず」。約45年前の「黒い霧事件」で「疑わしくは罰した」ことで球界の浄化を図ったのと対照的と言えるコミッショナーの大甘処分。「調査は捜査と違って限界がある」と言うが、検察庁の要職を歴任した熊崎氏が捜査機関と連携できない訳がない。禍根を残さなければいいと願っている。

▽開幕戦に大勢のファン

そんな中、3月25日に開幕したプロ野球に、不祥事再発を心配しながらセ、パ6球場に約19万8000人のファンが詰めかけた。

メディアは、東京ドームの巨人戦に来たファンの声として「開幕するのはいいが、監督がしっかり説明する場があってもよかった」「(コミッショナーが)開幕延期を決めたら自分は受け入れた」と紹介している。

そういえば、多くの監督は不祥事に関して意見を言うことをためらっているようにも思える。監督やコミッショナーの考えがファンに届いていないのだ。

▽明暗分ける連敗

さてペナントレースだが、セ・リーグでは巨人が外国人選手の活躍で開幕4連勝と、高橋新監督にとって願ってもない好スタートを切った。逆に昨年優勝のヤクルトは4連敗。金本新監督の阪神の滑り出しも悪くない。

パ・リーグは大本命のソフトバンクをはじめ全球団が勝率5割前後で並んでおり、昨年のようなソフトバンク一強ではない混戦を予想させる開幕である。

ペナントレースを左右する、特に優勝を争う上で避けたいのは長期の連敗だろう。セ、パ12球団の全球団が4連敗以上を記録した。ソフトバンクは昨季、優勝が決まった後に6連敗したが、3連敗は2度あるだけ。

ヤクルトは5月に本来なら致命傷となる9連敗を喫したが、他球団がパとの交流戦で不振を極め、6球団が貯金ゼロという珍現象に救われ、優勝争いに残れた。

逆に正念場の9月以降に1度も2連敗すらしなかった。ヤクルトと優勝を争った巨人は4連敗が5度、5連敗が2度あった。

▽昨年前半戦はDeNAが主役

昨年のセではなんと言ってもDeNAの戦いぶりが注目された。4月に7連敗、6月に12連敗(1分けを含む)しながら前半戦で首位に立った。

ところが、オールスター戦明けに4連敗、1勝後にまた4連敗と失速してしまった。

原因はいろいろ言われるが、肝心なのは監督の手腕だと思う。チームが好調なときは何もしなくても勝てるが、いったん雲行きがおかしくなると悪循環に陥る。

それを立て直すためにどう手を打つか。ある程度の連敗は仕方ないが、どこで食い止めるかが勝負となるのである。

▽監督の手腕

1986年の西武と広島の日本シリーズは唯一、第8戦まで行われたことで球史に残る。

西武・森、広島・阿南と両新人監督の対決でもあった。第1戦引き分けの後、広島が3連勝した展開。しかし、ここから西武が盛り返し4連勝で日本一。その後の森・西武の快進撃が始まったのである。

このシリーズを分けたのが監督の采配だったと思う。第4戦以降、巻き返そうとした阿南監督が起用した選手がミスして試合を落としたことでチーム内に不満が立ちこめたのだ。

短期決戦の難しさではあるが、評論家諸氏は「経験の浅い選手の起用」が敗因と指摘した。流れを変えようとしたことが裏目に出た好例だが、運不運ではなく、そこにはある程度の勝算がないといけないだろう。

▽勝負の心理学

「賭博と国家と男と女」(竹内久美子著、文春文庫)という本の中に「阪神はなぜ負けるのか」という、阪神ファンには刺激的な見出しを付けられた1項がある。断っておくが、内容は何も阪神でなくてもいいことで、要は勝敗を決める、特に続けて負ける要因は何かを書いている。

A、B、C、Dという4匹のコオロギは、けんかが強い順になっているが、それをAとB、CとDの2組に分けて戦わせると当然のようにAとCが勝ち続けた。

そこで再び4匹を一緒にして戦わせると、Aに負け続けたBがCに勝てなくなったという実験結果を紹介している。

つまりプロ野球では同じ対戦が3試合続き、そこで負けた自信喪失から立ち直れないまま次々と対戦するから大きく連敗することがあるというのだ。そこから抜け出すには「休み(不戦)」が有効だと説くが、勝手に試合をしない訳にはいかない。

敗戦ショックを受けていない選手を起用するのは一つの手だが、先の阿南監督のように裏目に出ることもある。

要は「Aのような主力打者やエース」をつくることだが、こうした心理面を研究しておくことも連敗しないことにつながるかもしれない。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆