野球の告知ポスターといえば、どのようなものを想像するだろうか。情熱、覚悟、勇ましさ、躍動感……。プロ、アマを問わず、そんなキーワードを具象化したものが一般的だろう。腕組みし、眼光鋭くこちらをのぞく選手たち。力感あふれるスイングを見せる打者。そんなイメージだ。野球殿堂博物館の主任学芸員で「日本野球ポスター展」を企画する関口貴広氏は、近年は各球団とも創意工夫をこらしていると前置きした上で「選手の魅力を伝えるものが普通」と言う。

今季の開幕に向け、楽天が制作したポスターはそんな定番とひと味違う。天然芝と観覧車を備え、生まれ変わった本拠地のコボスタ宮城(観覧車は5月に完成予定)を背に梨田新監督、選手、コーチが思い思いの姿でたわむれる。芝生にだらりと寝転ぶ選手、ポップコーンを膝に乗せた選手、空を飛ぶ選手までそこにはいる。「ワクワクがとまらない!」とのキャッチコピーの通り、まるで遊園地のポスターだ。

奇想天外。しかし、ここに「新生楽天」の全てが詰まっているように思う。球団はオフに、総工費30億円を投じて本拠地を大改修した。創設時からの悲願だった天然芝化のほか、公園や国内球場初となる観覧車を設置。「ポスターは、球団がどういうお客さんに来てもらいたいと考えているかを反映すると思う」と関口さんが言うように、これまで以上に、根っからの野球好きだけでなく子どもや女性にも魅力的な姿に変わった。

しかし、ハードだけで「遊園地」は完成しない。2年連続最下位からの巻き返しへ、チームはリーグ優勝2度の実績を持ち、笑顔を絶やさない梨田監督を外部から迎えた。ロッテからは今江を獲得。ドラフト1位新人のオコエ、体重135キロの巨漢アマダー、米大リーグ通算162本塁打のゴームズと個性豊かな面々が彩りを加える。ポスター制作を主導した小倉亜紀プロモーション部長は「ワクワクする気持ちが職員にもあった。それを伝えたかった」と語る。

変化の息吹は、グラウンドでも見られる。自らの方針を押しつけるのではなく、じっくり個々の力量を見極める梨田監督の下、選手は生き生きとプレー。打率、得点ともにリーグワーストだった打線は厚みを増し、打ち勝つ試合が目立つようになった。オープン戦は、9勝5敗1分けと期待を抱かせるに十分な成績だった。とはいえ、春のワクワク感も、結果を伴わなければ桜のようにはかなく散る。「ポスターを見たお客様に来ていただき、その声援の後押しでチームが勝てば一番だと思っている」と小倉部長。

果たして、シーズン終盤もワクワク感は続いているのか。優勝争いのドキドキ感に変わっているのか。3月25日、王者ソフトバンクを本拠地に迎え、楽天のシーズンは開幕する。

芹澤 渉(せりざわ・わたる)1980年生まれ。東京出身。週刊誌編集者を経て2008年に共同通信へ。プロ野球の阪神、ヤクルトを担当し、15年から楽天担当。