収束したと思われていた「野球賭博問題」が再燃した。

3月8日、巨人は昨年10月の福田聡志、笠原将生、松本竜也の元選手に続いて高木京介投手も野球賭博に関与していたと発表した。

「野球賭博問題は終わったのでは」と思っていたファンはびっくりしたことだろうが、巨人にはびこる野球賭博の根深さにあらためて驚かされた。

さらに14日には、新たに試合の結果によって選手間に金銭のやり取りがあったことが明らかにされるなど、球界の「盟主・巨人」に次々と問題が起こっている。人気球団だからなのか、選手個々の問題ではない、構造的な欠陥も見え隠れする。

▽疑念が現実に

日本野球機構(NPB)は昨年、笠原元選手ら3人には無期失格選手の処分を下し、球団には制裁金1000万円を科した。

この処分発表の場で、調査委員会は3選手以外に「今のところ(関与の)事実はなく、他球団で同じことをしている情報は得ていない」と事実上の収束とも取れる発表をした。

当初、NPBは調査には1カ月か1カ月半ぐらいかかると言っていたが、福田元選手の野球賭博発覚後の調査で、携帯電話の通話履歴などから笠原、松本竜元選手の二人も野球賭博に関与していたことが判明した。この間、わずか半月。

この幕引きに「本当に彼らだけなのか。他にもいるのではないか」といった疑念の声が上がったもので、高木京投手の野球賭博でそれが現実になったのだ。

▽コミッショナーの責任問題

野球賭博で4人目の関与が明らかになり、熊崎勝彦コミッショナーは「痛恨の極み」と話したが、その責任は大きいと思っている。

元最高検察庁検事で、2005年からNPBのコンプライアンス担当としてコミッショナー顧問を務めており、プロ野球のさまざまな問題点を知っている立場にあった。

2年前にコミッショナーに就任したが、いわば今回のような不祥事は専門分野とも言える人物と見られていた。

プロ野球界は50年ほど前に「黒い霧事件」と呼ばれた八百長問題で6人の永久失格選手を出して大騒動になったことがある。

その教訓から八百長、つまり敗退行為には神経を使ってきた歴史がある。だから、そうした危険と背中合わせにある野球賭博を厳禁してきた。

コミッショナーの重要な役割の一つはそうした危険な芽を事前に摘み取ることにある。

しかし、熊崎コミッショナーは球団からの告発を受けて調査する姿勢に終始していて、自らがリーダーシップを発揮して真相解明に当たろうとはしていない。ここに第一の問題がある。ここ何代かのコミッショナーと同じ姿勢だと感じている。

▽声出し選手にご褒美?

今回の新たな問題は、巨人の選手が自チームの公式戦の勝敗で現金をやり取りしていたという。ある新聞報道がきっかけで巨人とNPBが公にしたのはこうだ。

試合前に投手と野手それぞれがベンチ前などで円陣を組んだりして士気を高めるのだが、そこで「頑張ろう」などと声を出す選手に、その試合に勝てば他選手から一人5000円を受け取り、負ければ他選手に1000円ずつを支払っていた。

勝った試合では約14万円ほどの金額になる。こうしたやりとりは12年シーズンごろから始まったそうだ。

優勝を争う終盤には、多くの球団で勝ち試合に報奨金を出すという話は聞いたが、この巨人のような「声出し選手」でのお金のやり取りは聞いたことがない。

数千万円の年俸を得る1軍選手からすれば微々たる金額という訳だ。そして選手だけでやっていたというが、本当だろうか。

▽「敗退行為に当たらない」

こうした事実は昨年10月のNPBの野球賭博選手への調査の中で明らかになっていたが、「野球協約にいう敗退行為(八百長)には当たらない」と結論付け、公表しなかったそうだ。

調査された選手がマスコミに漏らして発覚した。他にも巨人では練習でのノックでも賭けの対象として日常的に金銭の授受が行われていたが、これも公表されなかった。

野球協約に触れないなら何をやってもいい訳はない。

NPBはちょっとしたことでもお金に結びつくことがまん延したらどうなるか。金銭感覚が麻痺することで、実際に若い選手が野球賭博に手を出したのではなかっただろうか。

そのすぐそばには、反社会勢力が手ぐすねを引いて待ち構えているのに。

▽問題多い罰金

熊崎コミッショナーもうすうす知っているだろうが、ほぼ全球団で選手からさまざまな罰金を徴収している。集合時間に遅れたりすれば、メジャーでも罰金を取る。

しかし、それはワンコイン程度である。若手が寝坊して遅刻することなどへの注意喚起である。

ところが、日本では桁外れの罰金を取るケースが後を絶たない。

昔、百万円という金額を取られた高校生ルーキーがいたと聞いた。お灸を据えた後に本人に返してやればいいが、必ずしもそうとは限らない。

罰金はグラウンド上のプレーにも適用されることがほとんどである。先頭打者を四球で出した投手。ツーストライクを先行させながらウエストボールを投げなかった投手。無死二塁で進塁打を打てなかった打者など、それこそいろいろなケースで選手をがんじがらめにしている。金額もさまざまだろう。

管理野球の行き着く先とも言える。選手への注意喚起から始まるのだが、エスカレートしていくのは世の常でもある。

徴収されたお金は、シーズンオフの選手の行事などに使われる場合がほとんどだが、選手から「あの金はどこにいった」と疑問視する声が必ず上がる。

メジャーなら訴訟を起こされかねない。子どもたちに説明できない、本筋から外れたことは早くやめるべきだ。

▽開幕は大丈夫か

野球賭博に端を発した今回の不祥事は、さらに広がることが心配される。

熊崎コミッショナーには、その言葉どおり「全てのうみを出す」ことに邁進して、プロ野球の失地回復に努めることが求められるが、どこまで危機意識を持っているのか。

4人目の高木京投手の記者会見での涙は多くの人の同情を誘ったが、「取り返しのつかないことへの後悔」を他の選手は知ることだ。

国学院大時代の高木京投手を知っているが、まじめな性格とは裏腹に賭け事好きが墓穴を掘った。チーム内の雰囲気に気を許したのかもしれない。

球界関係者は実を上げていないことが分かった「選手教育」を考えることである。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆