メルボルンで1月に行われたテニスの今季最初の四大大会、全豪オープンで日本男子のエース、錦織圭(日清食品)は昨年に続いて準々決勝で敗退した。全米オープンで1回戦負けするなど、「モヤモヤ感」があった昨年後半の不振からは脱却して持ち味の攻撃的なテニスを披露した一方、世界ナンバーワンのノバク・ジョコビッチ(セルビア)には力の差を見せつけられて完敗した。2月14日にはメンフィス・オープンで大会初の4連覇を成し遂げたが、実は、この大会は世界ランキングでは格下の相手ばかり。錦織の視線の先にあるのは、あくまで日本人初のグランドスラム優勝。そのためには何が必要なのか、模索は続く。

私にとって、錦織が出場する大会の取材は全仏オープンの前哨戦だった昨年5月のイタリア国際(ローマ)以来。あの時も準々決勝でジョコビッチと対戦した。フルセットで負けたが、1セットダウンからの第2セットを攻めにいって奪った時の地鳴りのような大歓声(現地のファンは終始、錦織びいきだった)は今でも鮮明に覚えている。本人も「自分が主導権を握れて、攻めている時は本当に心地いい」と、手応えを感じていた。

ただ、今回の全豪オープンは勝手が違った。ミスを重ねて第1セットを落とすと、第2セットも立て直せずにジョコビッチを勢いづかせた。第3セットでは2度ブレークしながら、いずれも直後のゲームを落として流れをつかめずに完敗。試合後の記者会見では重苦しい雰囲気が漂った。普段はリラックスした様子で柔和な雰囲気を醸し出す錦織も「何かを変えないと勝てない」「(世界一とは)まだまだ差がある」と話し、表情を曇らせた。

準々決勝の直前の4回戦では、錦織が昨年の全仏オープンで4強入りを阻まれたジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス)にストレート勝ちしたのに対し、ジョコビッチはジル・シモン(フランス)と4時間32分の激闘を繰り広げていた。ジョコビッチの疲労が懸念された中での一戦で、実際にジョコビッチは最高の出来ではなかった。第1サーブが成功する率は57パーセントで、錦織より1パーセント低く、決定打の数も錦織より9本少ない22本だった。錦織の強打が通用する場面も多かったが、それでもジョコビッチがすんなりと勝ったのは、簡単なミスをせずに、鉄壁の守備で錦織のショットのミスを誘ったから。錦織も「集中したときの彼は攻めるのもできるし、守りもすごく堅い。一番崩すのが大変な選手」と、舌を巻いていた。

さらに驚くのは、ジョコビッチが準決勝、決勝とギアを1段階、2段階上げてロジャー・フェデラー(スイス)、アンディ・マリー(英国)という強豪を連破して大会の男子最多に並ぶ6度目の優勝を果たしたこと。これで四大大会は自身2度目の3連勝となった。四大大会初制覇という錦織の悲願の前に、これからも大きな壁となって立ちはだかりそうだ。

日本のプロテニスのパイオニア的存在、神和住純氏は「今のテニスは下の選手には通用する。でもさらに上のジョコビッチやマリー、フェデラーには難しい」と、指摘した。2014年全米オープンで準優勝して以降のグランドスラムは8強が最高。次の四大大会、5月開幕の全仏オープンまでに何をつかめるのか、注目していきたい。

吉田 学史(よしだ・たかふみ)1982年生まれ。東京都出身。2006年共同通信入社。仙台などの支社局で警察や行政を担当して12年から大坂運動部で高校野球やサッカーを担当。14年12月に本社運動部へ異動して、水泳、テニス、フィギュアスケートなどをカバー。