2月から日本のプロ野球各球団がキャンプインした。王者ソフトバンクは1990~92年の西武以来となる3年連続日本一を目指す。今季のチームのスローガンは昨季、浸透した「熱男(アツオ)」を継続した「熱男2016」。実は今季のスローガンは別の新しいものに決まりかけていた。最終選考に残った4候補を見た就任2年目の工藤公康監督が「あまりピンとくるものがなかったんだよ。『熱男でいいんじゃない?』と(球団に)言ったんだ」。この一言で最終選考の候補になかった「熱男」が復活。工藤監督もお気に入りのスローガンでV3に挑むことになった。

初めてこのスローガンを目にした時、これだけ浸透するとは思わなかった。浸透させたのは昨季の選手会長だった松田宣浩内野手。本塁打を放ち、チームメートとベンチ前でハイタッチを交わした後、観客席に向かってガッツポーズをしながら「熱男!」と叫び、ヒーローインタビューでも締めの言葉にしたことで広まった。最大の功労者は、昨年オフに米大リーグ挑戦を表明。迷った末にソフトバンク残留を選んだことも、スローガン継続となった一因だろう。松田選手にとって今や“鉄板"のネタとなっている。今キャンプの練習中にも「熱男」と叫べば、必ずファンから歓声と笑いが起こる。米球界から5年ぶりに古巣に復帰した和田毅投手も2月7日の野球教室で半ば強制されて叫んだ。一緒に教室に参加した松田選手は「和田さんが言えば、投手陣にもっと広がる。(米国帰りだから)ホットマンだ」とご満悦。チームに一体感を持たせることにも役立っている。

3年連続日本一のハードルは高いが、十分可能な戦力を持っている。昨季31本塁打を放ち、日本シリーズで最高殊勲選手に輝いた李大浩内野手が大リーグのマリナーズとマイナー契約を結んで抜けても、穴を埋める選手の駒はそろっている。工藤監督が李大浩の不在を「プラスにとらえる」と話すように、昨季4番を務めた内川聖一外野手が経験のある一塁手の練習を本格的に始めた。3年連続で打率3割の中村晃外野手も一塁を守れるし、昨季ウエスタン・リーグで本塁打王と打点王を獲得したカニザレス内野手もいる。主に左翼を守る内川選手が一塁に回れば、外野の選手にも新たにチャンスが巡ってくる。昨季は好調な選手を次々と1、2番に起用、ことごとく采配が当たった工藤監督は、現段階では、一塁手を固定せずに選手の状態を見極めてスターティングメンバーを決める方針だ。

12球団トップの破壊力を誇る強力打線。その主軸の目標も高い。昨季打率3割、30本塁打、30盗塁のトリプルスリーを達成した柳田悠岐外野手は、日本で前人未到の40本塁打、40盗塁を掲げ、内川選手は日本人選手の右打者では誰も成し遂げていない200安打を明言した。昨季自己最多の35本塁打を放った松田選手も40本塁打を目指す。いずれも達成できそうな高い能力を持つだけに、主力にけがさえなければ、他球団に与える脅威は変わらないだろう。昨季1軍の試合に出場した選手の今季の年俸合計は推定で約50億円に上る。戦力面だけでなく、資金面でも球界の盟主になりつつあるソフトバンクを止めるチームはあるか。シーズン開幕が待ち遠しい。

城山 教太(しろやま・きょうた)1976年生まれ。札幌市出身。2000年共同通信入社。京都、鳥取、広島支局で警察、行政などを担当して10年から運動部。レスリング、スキーなどで夏季、冬季の五輪取材を経て、15年からプロ野球ソフトバンクを担当。