日本と韓国、そしてイラク。今年8月にブラジルのリオデジャネイロで開かれる夏季五輪・男子サッカーのアジア代表3カ国が決まった。

プロサッカー選手の五輪出場を認めるようになったのは1984年のロサンゼルス大会。そして、原則「23歳以下(U―23)」という年齢制限(オーバーエイジ枠は除く)が設けられたのが、92年のバルセロナ大会以降だ。プロ化されてからの五輪で、アジア勢はこれまで3カ国がベスト4に進出している。それは前回、2012年ロンドン大会で3位を争った日本と韓国。そして、04年アテネ大会で4位に入ったイラクだ。過去の五輪における実績を踏まえれば、今回の結果は表面上、妥当ということになる。

惨敗に終わった一昨年のワールドカップ(W杯)ブラジル大会を受けて、日本のサッカー人気は頭打ちになっているという。テレビで熱心に試合を見ているファンは、欧州チャンピオンズリーグ(CL)に代表される世界最高峰のサッカーに接することができる欧州サッカーに走り、その関心がJリーグに向けられる可能性は低い。

欧州サッカーを幅広く扱う衛星放送会社のアンケートによると、契約者にはサッカー未経験者が多く、サッカーのテレビゲームが興味を持つきっかけになっているという。プレーしたことがない故に、ミスを犯した選手に共感することは残念ながら少ない。興味の対象はもっぱら、選手個々の能力と戦術だ。それが数値化されたデータとしてあれば、より楽しめる。日本で開催された昨年のクラブW杯決勝のスタンドが高額なチケットにもかかわらず埋まったのは、優勝したバルセロナが“テレビゲーム"化されたサッカーを展開するからだ。

そんな―サッカーは好きだけれどもJリーグには関心が向かない―人たちを含めた新しいファン層の開拓を目的に、J1は昨季から2ステージ制を再導入した。それがどれほどの効果があったかは分からない。ただ、今回の五輪はファン獲得の大きなチャンスといえるのではないだろうか。

オリンピック―。日本人ほど、この響きが大好きな国民はいない。開催中は、マイナー競技であってもヒーローやヒロインが次々と誕生するほどだ。サッカー界もこれを活用しない手はない。リオデジャネイロでの戦いぶりいかんによっては、新たなファンを獲得することは十分に可能だろう。

五輪を戦うU―23代表のほとんどは、J2を含めJリーグでプレーしている。新たに興味を抱いた人が各地のスタジアムに足を運べば、人気回復にとって何より有効だろう。そのためには日本サッカーの全知全能を傾けて、五輪に臨む代表を最高のチームとすることが必要だろう。

W杯でベスト4に食い込むことは、マジックでも使わない限り難しいのが現実だ。しかし、五輪に関しては前回のロンドン大会を見るまでもなく、決して不可能ではない。

サッカーに知識のない人に対してはだますようで心苦しいのだが、五輪は世界一を決める大会ではない。基本23歳以下の選手で構成され、その国のベストチームを組んでくるチームも少ない。なぜならば、プロリーグのシーズン開始と重なる欧州クラブは有力選手になればなるほど出してくれないからだ。その欧州クラブに多くの選手を供給している南米も同様だ。しかも、6月にはA代表で挑むコパ・アメリカ(南米選手権)がある。当然ながら、優先度はこちらの方が五輪よりも高い。そんな中、ネイマールを始めとするオーバーエイジも含めたベストの布陣で臨んでくることが疑いないのが、いまだ五輪サッカーで金メダルのない開催国のブラジルだ。

優勝を飾ったとはいえ、今回のアジア予選における手倉森ジャパンが本当に強かったかと問われると疑問符は付く。ただ、次の要素は持っていた。ピンチに耐える忍耐力。勝負を諦めない執着心。勝負どころでリスクを恐れずにチャレンジする勇気。そして、運を引き寄せる力。これらの要素が集まれば、「良いチーム」と評価されるのは当然だ。しかも、タイトルを手にしたのだから「かなり良いチーム」だ。

しかし、雰囲気の良さが手に取るように伝わってきたドーハの23人のチームは残念ながらここで終わった。本大会の登録は18人。当然、本気で勝負を考えるなら最大3人を招集できるオーバーエイジは不可欠だ。そうなると今回のチームから最大で8人ものメンバーが外れなければいけない。

その意味においては、五輪はW杯以上に本大会の芝生を踏めなかった仲間の気持ちを背負って戦う大会だ。だからこそ、より必死に戦わなければいけない。その思いは必ず感動として見ている私たちに伝わるはずだ。

新たな観客をJリーグに導く起爆剤。それは見る者の心を共鳴させることのできるチームの存在だ。進化を続ける日本五輪代表に、その可能性は秘められている。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。