職人の世界をあらわす言葉にはいろいろとあるが、そのひとつとして、うなぎ屋の「串打ち3年、割き8年、焼き一生」というのがある。「桃栗(くり)3年柿8年」から来ている言葉だが、ポイントは「焼き一生」だろう。つまり、探求し続けても決してゴールが見えてくるものではなく、さらにその先があるというもの。そして、一代で終わることなく、次の職人が後を継いでいくことで、ひとつの文化へと昇華していく。これを自動車メーカーに置き換えてみると、レースこそが文化のひとつと言えるのではないだろうか。

1950年に始まったF1において、唯一参戦を継続しているフェラーリを筆頭に、66年から98年までルマン24時間の総合優勝を争うべくワークス活動を30年以上続けたポルシェ(2014年にワークス活動を復活)、そしてルマン24時間でのワークス活動を1999年以降継続しているアウディといった具合に、レース活動が自動車メーカーにブランド力をもたらしている。「継続こそ力なり」とはよく言ったもので、どんなマーケティング活動や広告よりも、レースを継続すること、そして、そこで実績を残すことが、自動車メーカーにとっての魅力につながっているのだ。

4日、トヨタ自動車が今年のモータースポーツ活動計画発表会を行った。そこで、注目を集めたのが、10年連続となるニュルブルクリンク24時間への出場だ。ニュルブルクリンク24時間は、「世界最高峰の耐久レース」であるルマン24時間に対し、「世界最高の草レース」と称されている。素人からプロドライバーまで参加でき、多いときは200以上のチームが出場した、「世界最大規模のレース」でもある。

トヨタの初挑戦は2007年。当時は全員がトヨタ関係者で、同社の豊田章男社長も「モリゾウ」のエントリー名で出場した。その後、「モリゾウ」は9年間でじつに5回もステアリングを握っている。自動車メーカーのトップがレースの楽しみを知る意義は大きい。ルマン24時間も組み込まれている世界耐久選手権(WEC)シリーズへ12年以降参戦しているほか、すでに決定している17年からの世界ラリー選手権(WRC)への復帰といった、最高峰レースへの支援にもつながっている。

今年60歳になる豊田社長は、まだまだ経営の第一線で活躍するだろう。そして、節目となる今年は、「世界選手権」と「草レース」という両輪のレース活動をどう次の世代まで継続させ、トヨタの文化へと昇華させるのか、ひとつの指針が見えるに違いない。(モータージャーナリスト・田口浩次)