ラグビー担当として2年目に入ったばかりの私が言うのも気が引けるが、1月24日に行われたトップリーグ(TL)決勝は、屈指の名勝負として人々の記憶に刻まれるはずだ。スコアは27―26。パナソニックが東芝を退けて3連覇を達成した。両チームは12月のリーグ戦でも17―17で引き分け。パナソニックはシーズンを通して強く、東芝も準優勝にふさわしいチームだったことをスコアが証明している。

決勝は後半ロスタイムが印象的だった。東芝がキックパスから劇的なトライを奪って1点差に迫ったものの、続くゴールが外れて試合終了。決まっていれば2点を追加した東芝の1点差の逆転勝利だった。パナソニックを率いる世界的名将のロビー・ディーンズ監督は「東芝との差は少なかった。1点という得点差。それ以外には何もない」とライバルに深く敬意を表した。

群馬県太田市に本拠を置くクラブを率いるディーンズ監督をラグビーファン以外の方にもここで知ってもらいたい。就任2季目、ニュージーランド出身の56歳。現役時代は同国代表「オールブラックス」に選ばれ、指導者としては世界最高峰リーグ「スーパーラグビー」で数多くのタイトルを獲得した。オーストラリアの代表監督としてワールドカップ(W杯)も戦った。素顔は温厚ないいおじさんで、スターバックスコーヒーを好み、息抜きはスカッシュと自転車。飾らない性格が周囲を魅了する。

昨年取材した際に聞いた言葉が忘れられない。「自分が快適ではないことを、快適だと思えるスキル(技術)を身に付けさせること。自立した選手を育てること」が目標だと言っていた。そのシンプルな教えは決勝でもチームの哲学として発揮されていたように思う。

パナソニックは東芝優勢と見られていたスクラムで互角以上に張り合い、試合の主導権を渡さなかった。秩父宮ラグビー場のグラウンドはシーズン終盤で芝がはげ、砂場のようになっていた。W杯日本代表で主将を務めた東芝のナンバー8、リーチ・マイケル選手は「自分は足が滑ってしまったが、パナソニックの選手は滑っていなかった」と振り返っている。さすがのパナソニックFW陣も砂場のような足元を「快適だ」とは思わなかっただろうが、悪条件に順応し、百戦錬磨の日本代表主将を「(スクラムなどの)セットプレーで有利に立てなかった」とうならせた。

ハラハラドキドキの80分間を戦い終え、優勝インタビューでディーンズ監督は「これがラグビーです」と超満員の観衆に向かって言った。「快適でないことを快適だと思うスキル」を身に付けることはなかなか難しい。それでも常に心にとどめておきたい金言だと思った。冬のラグビー観戦は泣きたくなるほど寒い!だけど、晴れ渡った冬空の下での激闘に、心は熱くなった。

小海 雅史(こかい・まさし)1982年生まれ。東京都出身。2005年共同通信社入社。福岡支社で大相撲やサッカー、プロ野球ソフトバンクなどを取材。11年から東京で巨人などを担当。15年からは卓球やラグビーなどをカバー。