今シーズンのJリーグが閉幕した。J1のチャンピオンシップ(CS)も、J2のJ1昇格プレーオフも、試合としてはスリリングな展開で十分に楽しめた。その上で個人的には、リーグ戦の「正義」が守られる結果となったのは、本当に良かったと思う。

日本人監督としては初となる3度目のJ1制覇。その偉業を成し遂げた広島の森保一監督が、テレビのインタビューで語った言葉が印象的だった。企業名を極力排除する某テレビ局の放送であるにもかかわらず、あえてスポンサー名を出して「チャンピオンシップ優勝できました」と叫んだのだ。そう、J1リーグではなくCSの優勝なのだ。

深読みし過ぎかもしれないが、発せられた言葉に森保監督の皮肉が込められていたら最高だ。勝ち点1の重みを知る監督や選手は、リーグ戦が何たるかを身に染みて理解している。だから、森保監督に「年間最多勝ち点(74)をリーグ最多得点(73)と最少失点(30)で成し遂げているじゃないか。それなのに何でタイトルを失う可能性のある危ない橋をいまさら渡らなきゃいけないの」という思いがあったとしても不思議ではない。

結果的に広島が勝ったからいいものの、これでG大阪がCSを制していたらどうなったのだろうか。年間3位のチームがチャンピオンになったら、大きな違和感があるだろう。

第1ステージに優勝し年間勝ち点2位を獲得した浦和は、今回のレギュレーションではG大阪より下の3位として記録される。年間勝ち点は浦和の72に対し、G大阪は63。シーズンを通して地道に積み上げてきた勝ち点9のアドバンテージは、あっさりとひっくり返されたのだ。これには熱狂的で知られる「赤」のサポーターも納得いかないはずだ。特に浦和のサポーターは、CS開催に異を唱えていた人が多かったという事実もある。

そもそも、2ステージ制とCSが11年ぶりに復活した理由は何か。2008年をピークに観客数が減り、リーグの収入が減ったことが原因らしい。ただ、観客数を増やす努力は本来、各クラブがするべきことで、Jリーグという「お上」が押し付けるものではないはずだ。観客動員に関してはJ1松本の例でも分かるように、地域を巻き込んだクラブの努力で何とでもなりそうなものなのだが。

組織である以上、安定運営のためにJリーグがスポンサー料を始めとする収入を得たいということは分かる。ただ、その“不純な"目的のためにタイトルの「重み」を切り売りし、チャンピオンの価値を場当たり的に変えるのは許されることではない。それはサッカーというスポーツに対する冒涜(ぼうとく)というものだ。

論争を巻き起こす可能性のあったJ1のタイトル争いが無事に終わった翌日の6日にはJ1昇格プレーオフ決勝が行われた。シーズン6位のC大阪と対戦した同3位の福岡が、後半42分に中村北斗が決めた劇的ゴールで引き分けに持ち込み、ドローの場合はシーズン上位クラブが勝者となる規定により、5シーズンぶりのJ1復帰を果たした。

12年に始まり今年で4回目となるこの大会だが、リーグでの3位チームが制するのは今回が初。その意味では、チームを預かる監督にとってみると、ギャンブル性の高い大会と言える。一方、勢いを追い風に短期決戦を勝ち抜いたチームはいずれもJ1のシーズンが始まると戦力不足を露呈した。事実、12年の大分(シーズン6位)、13年の徳島(同4位)、14年の山形(同6位)はすべて1年でJ2へ逆戻りしている。確かに「下克上」をうたい、一発勝負の緊張感のある戦いは楽しいのだが、そのことでリーグ戦の公平性がゆがめられているのも事実だ。

C大阪のサポーターには申し訳ないが、リーグ3位の福岡が昇格したことは個人的には良かったと思う。リーグ戦で福岡が獲得した勝ち点は82。4位のC大阪は勝ち点67なので15ポイントも引き離す圧倒的な差だ。さらに言えば―3月の理事会で決まっていたことなので仕方がないとはいえ―決勝の舞台がC大阪の本拠地であるヤンマースタジアム長居だったのも疑問だ。それだけに、この不公平感を跳ね除けての福岡の昇格は手放しで称賛されるべきだろう。

結末はこれ以上ない収まり方を見せた今季のJリーグ。ただ、問題や矛盾点はいまだに数多くある。その改善点に常に取り組む姿勢を持ち続けなければ、そのブランド力が急激に低下する恐れは消えない。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。