2015年のプロ野球は面白いシーズンだったと思う。

パ・リーグはソフトバンクが予想通りの強さを発揮してペナントレースを独走し2位に12ゲーム差をつけて優勝。クライマックス・シリーズ(CS)、日本シリーズでも強さを見せつけた。

チームづくりの確かさを見ていて、かつての西武を思い起こさせた。オフの契約更改では摂津、松阪、メジャー帰りの和田3投手の4億円を筆頭に年俸1億円を超える選手が12人も誕生した。

▽久々の3連覇に挑戦

ソフトバンクは16年シーズンで3年連続日本一を目指すことになる。これまで日本シリーズで3連覇以上したチームは巨人、西鉄(現西武)、阪急(現オリックス)、西武の4球団だけで、最近では2連覇もなかった。ソフトバンクがやってのければ1990~92年の西武以来となる。

▽球史に残った7月3日

パとは対照的だったのがセ・リーグの戦いだった。競り合いが最後まで繰り広げられ、ヤクルトが残り2試合で14年ぶりのリーグ優勝を果たし、CSで巨人を下した。中日、DeNAが最後に脱落したが、こんな混戦こそプロ野球のあるべき姿だろう。

さて、球史に残った7月3日とは、同じリーグで6球団すべてが勝率5割を下回る、つまり負け越し状態になった日だった。

史上初めての珍事がセに起こった理由は、05年のセ・パ交流戦導入にある。交流戦で一方のリーグが大きく勝ち越すことと負け越したリーグが混戦だったケースで、いつかは起こると予想されていたが、それを見られるとは思わなかった。

▽主役だったDeNA

ヤクルトが真中新監督で優勝したが、セの主役はDeNAだったと思う。前半戦を首位で折り返しながら、失速して最下位に終わり、DeNAが目標としたCS進出はならなかったが、横浜は盛り上がった。

オーナーの続投エールにも中畑監督は辞任、ラミレス新監督が誕生した。その戦いに注目したいが、球団の経営戦略にも興味を引かれる。

▽球団を持って5年目

11年秋に球団経営に乗り出した際は「モバゲー」という自社商品名を球団名にしたい強い意向だったことを当時の春田オーナーが著書で言っている。そんな球団が16年からビジター・ユニホームの胸マークを「DeNA」から「YOKOHAMA」にする方針だという。

そういえば、横浜市内の小学生に「ベイスターズ」の帽子を72万個配った。球団を持って5年目となる。「横浜」というブランドを前面に押し出そうとしている。

16年1月をめどに、本拠地・横浜スタジアムの子会社化を目指し株式公開買い付け(TOB)による買収を進めている。

球団と球場の一体経営で球団の赤字解消を図り、優勝を争える強い球団をつくるのだという。

観客動員数は年々増やしてきたが、成績は4年とも5位以下。真の人気球団となるには勝てるチームにすることだとの認識で、チームづくりは監督中心ではなくGMを軸にしたメジャー流を貫こうとしている。

中畑監督が要求するコーチ人事を受け入れなかったのはそんな背景があったようだ。

▽二人の「トリプルスリー」

ソフトバンク・柳田、ヤクルト・山田が打率3割、30本塁打、30盗塁をクリアする「トリプルスリー」を同時に達成した。

この二人を中心とした若きスラッガーが次々と登場したことで女性ファンも増えた。全12球団とも観客動員で前年を上回る“好景気"となった。

パが過去最多の約1073万人で、セは広島が球団創設初となる200万人を突破するなど約1351万人を動員した。

こうした今こそ、プロ野球界は改革に着手する絶好の機会だと思う。16年を「イノベーション(革新)元年」にしてもらいたい。

パの6球団は株式会社をつくってチケット販売や映像サービスをやっているが、セはそこまで踏み切れていない。

しかし、1球団でできるサービスは限られていることも事実である。ラグビー人気に見られるように、「見るスポーツ」の多様化はさらに進んでいく。改革、改善の手を緩めると途端に陰りがのぞく。

巨人の3選手による野球賭博問題で受けたダメージを払拭するような「魅力あるプロ野球」をコアな野球ファンはもとより、新たなファン獲得のために提供できるかだろう。

▽ビッグデータの活用

最近のスポーツ界はビッグデータをいかに活用するかが勝負といわれている。現場では既に膨大なデータを駆使したチームづくりや選手の強化、健康管理が行われている。

先のラグビーのワールドカップで日本代表が強豪の南アフリカを破る大金星を挙げた背景に、自チームはもとより相手チームの徹底したデータ分析があったのはよく知られている。

選手の動きを数値化した「トラッキング(追尾)データ」をフル活用したのである。サッカーのJリーグも全球団にデータを提供してレベルアップにつなげようとしている。

▽立体映像サービス

一方、見る側にも多くのデータを提供することで価値を生み出しているのはスポーツ大国アメリカである。事細かい数字の情報をアプリなどを通じて知らせるのはもとより、トラッキングデータを基にした立体映像も提供する。例えば、球場にいてホームランなどの再現映像が見られるというわけだ。

審判の判定に異議を訴える「チャレンジ制度」を最初に導入したプロテニスはそんな技術を使ったものだし、日本のゴルフ中継でもボールの軌道を色つき映像で再現している。

野球なら本塁打の飛球軌道や投手の投球軌道の立体映像を球場の大画面で見せるサービスが可能になる。

米プロバスケットボールのNBAはそうしたサービスでTV放送権料が跳ね上がったそうだ。

言うまでもないが、金も人手もかかるこうした大がかりな革新は球団単位ではなく、プロ野球界が一体となって取り組まなければならない。それにはまず、旧来の考え方を一度は捨ててみることだ。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆