2015年のプロ野球はソフトバンクが球団初の2年連続日本一を果たしてシーズンを終えた。プロ野球担当になって4年。毎年取材を通して色々なことを学んでいる。ことしは特に日常生活においても通ずるものを感じた。それは漠然と当たり前の目標を掲げているだけでは難しいということ。さらにもう一つ、目標に向けて人を突き動かす士気の重要性に気づかされた。

10月24日。日本シリーズ開幕の前日だった。ソフトバンクの内川聖一外野手が肋骨を骨折していることが分かり、2連覇をかける大舞台を欠場することになった。チームに走った衝撃は大きかった。李大浩内野手が「彼がいなければリーグ優勝、クライマックスシリーズ(CS)は突破できなかった」と言ったように、レギュラーシーズンでは主将と4番の重責を一身に背負ってリーグ2連覇に貢献。CSファイナルステージの第1戦で、左翼の守備で打球を追ってフェンスにぶつかり、脇腹を痛めたが、その試合、さらに第2、3戦と全3試合で決勝打を放って最優秀選手賞に選ばれた。日本一への決戦を前に大黒柱の不在は大きな痛手となった。

だが、それが逆にチームの結束と戦う意気込みのアップへと変わった。選手たちは「内川のためにも」という気持ちが大きくなった。試合中は背番号1のユニホームをベンチに掲げ、選手会長の松田宣浩内野手は内川選手の打撃用手袋をポケットに忍ばせて打席に入り、第1戦では先制のソロ本塁打を放った。代わりに4番に座った李大浩内野手は「内川選手は自分にとっては大きな存在。チームメートというだけでなく、同級生であり、友達であり、外国人の僕がスムーズにみんなになじめたのは彼のおかげ」という思いを抱きながら、5試合で2本塁打8打点の活躍で最高殊勲選手に輝いた。

対戦相手のヤクルトに目を向けると、14年ぶりの日本一という目標はあったが、ソフトバンクに勝る士気はあったか。シリーズを取材していた中では残念ながら伝わってこなかった。戦前から戦力差でソフトバンクに分があるとは見られていたが、能力の高い個人が「誰かのために」と団結すれば、2連覇は自然な結果だったように思える。

さて自分の仕事ではどうか。自分を突き動かすものを持てているだろうか。楽天の嶋基宏選手が、東日本大震災が発生した2011年の本拠地開幕の試合後に「誰かのために戦う人間は強い」とあいさつの中で述べた言葉が頭に浮かんでくる。今一度、「誰のために、何のために」ということを考えてみようと思う。そしていつか人の上に立つ立場になった時には、チームが同じ士気を持てるように自分は働きかけができているのだろうか。2015年のプロ野球は思いを新たにさせてくれたシーズンだった。

佐藤 暢一(さとう・まさかず)1984年生まれ、神奈川県横浜市出身。2009年に共同通信に入社し、12年からプロ野球楽天を担当。15年からは西武を取材。学生時代にはフライングディスク競技、アルティメットに没頭。