日本代表は17日、アウェーのプノンペンでカンボジアとワールドカップ(W杯)アジア2次予選E組の試合を行い、2―0と勝利した。これで5勝1分けの勝ち点16と同組首位をキープ。他の試合の結果と合わせ、無条件で最終予選出場が決まる1位の座は、日本を勝ち点1差で追う2位シリアとの争いになった。日本代表はこの試合で今年の日程を全て終えた。次は来年3月24日のアフガニスタン戦。ホームでの連戦となる同29日のシリア戦で2次予選が終了する。

ことし6月の2次予選初戦では、ホームでシンガポールと0―0で引き分ける不安なスタートを切った日本だが、その後は5連勝。G組で6連勝の韓国と共に無失点と、危なげない成績を残している。もっとも、比較的楽な組に入ったと思われた日本にとっては、当然といえば当然の結果。何しろシンガポールを除けば、近年は国内情勢がサッカーどころではなかった国ばかり。政府と反政府の両勢力に、過激派組織「イスラム国」が三つどもえの内戦を繰り広げるシリアは言うに及ばず、反政府武装勢力タリバンの攻勢が続くアフガニスタン、そしてカンボジアも20数年前までは血なまぐさい内戦の影響でスポーツ活動は休止を余儀なくされていた。

一方、普段は華やかな欧州サッカーシーンで、世界のトップクラスを相手に技を磨いているスター選手ぞろいの日本。国際サッカー連盟(FIFA)ランキングでも大きく引き離すこれらのチームを相手に連戦連勝はもちろん、圧倒的な力の差を発揮して5大会連続ワールドカップ出場の貫禄を見せてほしいというのが、偽らざる気持ちだ。ところが、第2戦以降は勝ち点3の獲得という最低限のノルマこそ果たしているものの、その中身はどうにも晴れない。韓国、イラン、オーストラリアなど、さらに手ごわいチームが待ち構えるであろう最終予選が心配になってくる。

「日本はもっと良くならなければならない。もう少し点は取れたと思う」。カンボジア戦後にそう語ったように、日本代表のハリルホジッチ監督も―慣れない人工芝での戦いという条件を差し引いても―試合内容に満足しているわけではない。同監督が前回対戦の「リベンジ」と位置付けた12日のシンガポールとの再戦は3―0で勝利した。だが、前半こそ狙いとするサイド攻撃から2点を奪ったものの、後半は暑さと疲れからか1点を追加するにとどまり、指揮官は「もっと点を取れていたと思う」と同様の感想を口にしていた。ボール保持では優位に立つものの、自陣ゴール前に人数を割いて守るアジア勢の攻略には依然として手を焼いている印象だ。

「チャンスをつくれないなら問題だが、チャンスをつくれているから心配していない」とは、日本代表のザッケローニ前監督もJリーグの監督もよく口にしている。得点が取れるか取れないかは、ラストパスやシュートの精度の問題というわけだ。そして、これには当然ながら絶対の解決策はない。最も大事な局面であるゴール前は、攻撃側も必死なら、守備側も身をていして懸命に守る。時間もスペースも限られた場面では、研ぎ澄まされた感覚と精緻な技術が明暗を分ける。最終予選ともなれば、シンガポール、カンボジアとのホームゲームで、それぞれ23本、34本のシュートを放ったような試合は想定しにくく、少ない好機を確実にものにする能力が要求される。これは各選手がそれぞれの所属クラブで磨き上げねばならず、共に過ごす時間が限られている代表監督が劇的な変化をもたらせる領域ではないだろう。

代表監督にできる仕事は、そうした技術を高いレベルで発揮することのできる選手を見いだし、試合で組み合わせることだ。ことし3月に就任したハリルホジッチ監督のチーム作りはまだ、「(就任)1年目はできるだけ多くの選手を呼び、直接話をするなどサッカーだけでなく人間性も見たい」(同監督)という段階にある。そして、最終予選、さらにはワールドカップ本大会を視野に「選手には高いレベルを求めている」とも話す。

今回の東南アジア遠征では、シンガポール戦で先制点を決めたFW金崎(鹿島)に加え、同試合でフル出場しカンボジア戦ではFKで相手のオウンゴールを誘ったMF柏木(浦和)の活躍が光った。共にハリルホジッチ監督体制では初招集。Jリーグでの好調ぶりを代表でも発揮したことに意味があり、いわゆる国内組の発奮材料にもなるだろう。ただ、指揮官が高いレベルのプレーを求めている以上、彼らが真価を問われるのは最終予選以降となるはずだ。正確なパスでリズムをつくり、チャンスを演出した柏木にしても、相手が深く引いていたために、余裕を持ってプレーができた。パスの出どころを抑えようとボランチにも厳しいプレスをかけるようなチームと対戦した場合、果たして今回のように攻撃を活性化できるか。

成績とは対照的に、まだまだ不安材料も多い日本代表。ラグビー日本代表の“株価急上昇"が目立つ一方、サッカーは“景気低迷感"が漂う。現在の状況が来年以降の飛躍を前にした「生みの苦しみ」であるように願う。

石川[いしかわ]あきらのプロフィル

サッカージャーナリスト。1956年、東京都生まれ。慶応大学卒。「サッカーダイジェスト」の編集に携わり、編集長を務める。ワールドカップは1982年スペイン大会から昨年のブラジル大会まで9回連続で取材を続けている。