間違いなく、シーズンは大詰めを迎えている。しかし、現実感に乏しい。J1第2ステージ(S)第15節が行われたのが10月24日。そこから、リーグ戦は1週間おきの開催となった。ヤマザキナビスコ・カップ決勝(同31日)と日本代表が戦うワールドカップ(W杯)アジア2次予選の2試合(11月12、17日)を挟むためだ。結果、第2S最終節となる第17節は22日となる。

優勝に降格、個人タイトルなど例年なら一番の盛り上がりを見せる時期での、この「間延び感」は、関心を持たない人にとってはサッカーの存在そのもの忘れさせるに十分なほどだ。その後にJ1年間王者を決めるチャンピオンシップ(CS)が開催されるのだが、一般の人は「まだJリーグをやっていたの?」になりかねない。

本来なら、1シーズン通しで行われるのが道理のリーグ戦。そのヤマ場を切り売りすることで、新たな支持層を獲得しようとしたJリーグ側の思惑は、どうもうまくいきそうもない。プラス面があったとしたら、新たなスポンサー料を得たことぐらいだろうか。

偶然だろうが、第16節(7日)は興味深いカードの組み合わせとなった。第2S首位の広島と4位のG大阪、2位の鹿島と3位の横浜Mが直接対決したのだ。

第1S覇者の浦和に続き、年間勝ち点で決まるCS出場権を第15節で手にした広島。第2Sの優勝にも王手をかけている一昨年のJリーグ王者と、昨年の3冠であるG大阪の試合は、その結果次第で最終節に多くの可能性を残す一戦となった。G大阪が勝てばCS出場の年間勝ち点3位をキープ。一方で広島が敗れると、鹿島の第2S優勝の芽も出てくる。逆にG大阪が敗れれば、FC東京が年間3位に浮上することもある。つまり、両試合ともが大注目だったのだ。

第2Sの首位を争う鹿島に得失点差で12点のリード。G大阪を下せば事実上、第2S優勝が決まるものの、広島には嫌なデータがあった。リーグ戦に限れば、敵地・万博記念競技場では実に14年もの長きに渡って勝利を収めていないのだ。

前半はG大阪のペースに見えた。しかし、宇佐美貴史が再三のチャンスを逃すと、流れは次第に広島へ。やはり、決めるところで決めなければならないのだ。

3冠を取った去年と勢いが明らかに違う。そう思わせるG大阪とは対照的に、いまの広島にはタイトルに向かう推進力を感じる。そのなかでもMVP級の活躍を見せるのがドウグラスだ。この試合でも後半10分に自ら仕掛けて、ペナルティーエリアすぐ外でファウルを獲得。それで得たFKを得意の左足で見事に左すみへたたき込んだ。今シーズンの広島はこの1点で十分。なぜなら先制点を挙げた試合では16勝1分けという圧倒的な勝率を誇っているのだ。

「選手が化ける」という言葉はよく聞くが、ドウグラスぐらい化けた選手はそういないだろう。2010年にJ2徳島に加入すると、13年までの92試合で24ゴールを記録。だが、徳島がJ1に昇格した14年は13試合で無得点と苦しむと、シーズン途中にJ2京都にレンタルされた。言い方は悪いが、その程度の選手だった。それが今季、広島に移籍したとたん18得点を挙げ、得点ランキングでも現在3位につける。こんな大活躍を演じるとは、誰も予想していなかったに違いない。そして、過去の歴史を振り返ると優勝するチームにはこのように彗星のごとく出現する選手が必ずいるものだ。

広島と鹿島が勝ったことで第16節での優勝は決まらなかった。とはいえ、12点の得失点差が残り1試合でひっくり返る可能性は99・9パーセントあり得ない。広島の第2S制覇は事実上決まったと言っていい。残り1節でのJ1の見どころは、広島と浦和の年間首位争い。そしてCS出場権を懸けた3位をFC東京と4位G大阪の試合結果。それぞれの勝ち点差はわずか2なので、順位の入れ替えは十分に可能だ。

ただ、一つ気になることがある。G大阪の元気のなさだ。天皇杯、ヤマザキナビスコ・カップに加えてアジアチャンピオンズリーグ(ACL)と、Jリーグで最も過密な試合日程を強いられてきた。それがACLの敗戦で、どこか気持ちが切れたように感じられる。最終節は得点源のパトリックが出場停止という苦しい台所事情はある。それでも昨年3冠の意地を最後に見せて欲しい。Jリーグの主役であるのは間違いないのだから。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。