日本ボクシング界のエース的な存在である、世界ボクシング機構(WBO)スーパーフライ級チャンピオン井上尚弥(大橋)が12月29日、東京・有明コロシアムでようやく初防衛戦を行うことが決まった。

昨年12月30日、衝撃のKO勝ちで世界最速8戦目での2階級制覇を達成。今年5月にも初防衛戦が計画されていたが、右こぶしを痛めたため試合は延期となっていた。

抜きん出た才能が光り輝く逸材。果たして今回はどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか。今からゴングが待たれる。

挑戦者は同級1位のワルリト・パレナス(フィリピン)。日本ではウォーズ・カツマタのリングネームで7試合をこなしており、一発のパワーには定評がある。

その半面、ガードが甘いという欠点があり、井上がその弱点をどう打ち崩すのか。懸案の右こぶしは「完治している。何の不安もない」と宣言。流れるようなコンビネーションが爆発すればパレナスもリングには立っていられないだろう。

実は昨年の快挙は世界的な話題にもなった。WBO王者オマール・ナルバエス(アルゼンチン)の安定したテクニックは知られており、井上の苦戦を予想する声もあった。

しかし、初回から不安を一掃。スピード豊かな連打で一流王者を圧倒、わずか2回で料理した。底知れぬ実力に誰もが驚く。デビュー以来8連勝(7KO)無敗。モンスター(怪物)の愛称にふさわしい鮮やかなKO劇だった。

井上の唯一の不安は「故障との闘い」だろう。強打ゆえにこぶしを痛めるケースは意外に多く、日本の世界王者では海老原博幸、浜田剛史などが泣かされてきた。

だが、初防衛戦を前に井上は「1パーセントの不安と99パーセントの楽しみがある。前半は自分の動きを確認し、中盤を過ぎたら一気に倒しにいく」と自信満々の様子だ。

所属ジムの大橋秀行会長はさらなる夢を明らかにした。「来年は米国デビューを考えている」と、愛弟子の将来性に期待を寄せている。確かに井上の強さとうまさは「すごい」と表現するしかない。

これまで50年以上、内外のリングを見続けてきたが、歴史を刻む能力と言っても決してオーバーではない。

初防衛戦をスカッと決め、来年の飛躍にどうつなげるのか。天才の動向から目が離せない。(津江章二)