広島の大黒柱、前田健太投手が球団に来季からメジャーに挑戦したいと正式に申し入れ、球団は12月の第1週までに方向性を出すことを確約した。

メジャー入りは前田のかねてからの強い希望でもあり、球団も事実上容認していると言われ、既定路線通り事が運ぶのは間違いない。

▽最多勝と2度目の沢村賞

前田のメジャー入りは昨年オフも取りざたされたが、2年連続3位の成績に地元では1991年以来のリーグ優勝への期待が高まり、前田も好成績を手土産にメジャー行きを決断したことで、1年延びた格好だった。

今季の前田は15勝で最多勝のタイトルを取り、2度目の沢村賞受賞と文句ない働きといえた。

チームは4位とわずかな差でクライマックスシリーズ(CS)出場を逃したが、前田は「優勝したいという思いもあったが、大リーグへの強い思いがあった。年々強くなっている」と正直に心情を吐露している。

2006年秋の高校生ドラフト1巡目でPL学園から入団の前田が海外FA権を取得するには早くて2017年。当然、ポスティングシステムによる移籍となる。

▽国際試合慣れ

前田に対してはヤンキース・田中やレンジャーズ・ダルビッシュ有のような高評価ではないものの、制球力と切れのいい投球で97勝を挙げた27歳右腕を欲しがる球団はあるだろう。

11月に台湾と日本で行われた国際大会「プレミア12」では日本のエースとして準々決勝のプエルトリコ戦では先発で7回無失点。13年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも2勝を挙げており、メジャー側の評価は済んでいるはずだ。

評価が分かれるとしたら、日本人投手の宿命でもある「長年にわたる肩の酷使」だろう。広島8年間で投球回数が200イニングを超えたのは今年を含め4度ある。

日本と比べて硬いマウンド、滑りやすいボールなど心配な材料もあるが、なにより本人の強い意思がある。ここはマエケンの挑戦を見守りたい。

▽心配な広島

ポスト前田もあるが、メジャー帰りの黒田の去就が注目されるなど、来季の広島には懸念材料も多い。ただ、カープ人気の方はすごくて、今季の観客動員数は球団史上初となる200万人を突破して211万266人で1試合平均2万9722人はセ・リーグで巨人、阪神に次ぐ多さである。

「カープ女子」という言葉を生んだ球団の努力もあるが、やはり「勝てるチーム」でないと長続きはしない。独特な球団経営と選手育成で地方球団の意地を見せてきた広島の真価が問われているともいえる。

▽変化する日米選手交流

昨年の松阪、今年の和田(ともにソフトバンク)と相次いでメジャーからプロ野球に戻って来る選手も目立つようになった。

“出戻り"選手たちは失意を感じ、周囲の冷たい視線にも耐えているかもしれないが、こうした日米の選手交流は双方にとって悪くないと思う。

日本で活躍してメジャーへ復帰する外国人選手も多い。ソフトバンクの李大浩(韓国)などは日本をステップにしてチャンスをつかもうとしている選手である。

1964年の村上雅則投手が日本人初のメジャー選手だが、95年の野茂英雄投手以来、50人以上の日本人大リーガーが誕生している。

今年は元巨人でインディアンスのマイナーにいた村田透が1試合だけながらメジャーのマウンドに上がった。

▽注目は大谷と筒香

日本人選手たちも一時のように何が何でもメジャーへ、という傾向は少なくなって来ているように思える。それはメジャーが選手を選ぶ目を厳しくしていることもあるだろうし、キューバとの国交回復なども大きい。

ここは「好景気に沸く」日本の球団が魅力あるプロ野球をつくる絶好の機会だろう。選手の待遇改善はもとより、球場の整備などに資本を投下してもらいたい。

一方でトップ選手のメジャー挑戦は続くだろう。「プレミア12」はメジャーのスカウトにとっては格好の見本市になったと思う。中でも日本ハム・大谷の投手としての評価はうなぎ上りだろう。もう1人いる。DeNAの筒香。本塁打も打てる外野手として注目されるに違いない。

その筒香がドミニカ共和国でのウインター・リーグに参加するため11月末に出発した。今更ながら、若い選手のグローバル化を感じる。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆