リハビリというとつらい、苦しいなど後ろ向きのイメージがどうしてもついて回るが、3月に右肘の靱帯修復手術を受けた米大リーグ、レンジャーズのダルビッシュ有投手の場合はちょっと違う。来シーズン序盤の戦列復帰に向け、「超」が付くほどポジティブな姿勢でリハビリをこなし、完全復活への歩みを進めている。

手術からちょうど5カ月となる8月17日にキャッチボールを開始した。球数は25で、距離は45フィート(約14メートル)。これを週3回こなし、3セットまでこなせれば、次は距離を15フィート(約4.6メートル)ずつ伸ばす。ダラス近郊のリハビリ施設で慎重に腕を振り、同時に鍛えられる部位は遠慮なく鍛えている。8月下旬に本拠地のロッカールームに姿を現した時は、まるでプロレスラーのように筋肉の隆起した上半身や腕を披露し、久しぶりに顔を合わせた日米のメディアを驚かせた。

「(リハビリは)ネガティブなことばかり周りから聞いていたけど、今のところ一回もそういうこともない」と本人は笑顔も交えて振り返る。この前向きさを支えるのは、人一倍の向上心と探求心だ。手術直後から回復時期によってどんな栄養素が体に必要なのかを熱心に研究し、細心の注意を払いながら栄養補助食品を摂取。さらに指先などを積極的に動かして常に刺激を与え続けた。面白かったのは、専門家に全てを任せるのではなく、自身の短文投稿サイトを使ってファンからもリハビリ方法を幅広く募集したこと。ピアノ、ギターなどさまざまなアイデアが寄せられた。体や脳を活性化させるために何が良いリハビリになるのかという自身の好奇心に対し、自らを「実験台」として効果的なやり方を現在進行形で探し続けたのが、いかにも彼らしかった。

「(リハビリの間に)できることがたくさんできるし、トミー・ジョン手術(右肘の靱帯修復手術の通称)の(回復までの)過程とかも伝えていくこともできる。良いこともたくさんあるので、僕はそこが楽しみ」と春先に語っていた。強がる様子もなく、冷静に。「ただ単に手術を受けたくないし、ただ単にリハビリをやりたくはない」とも語る。大リーグで先発投手の肩肘の故障をこれ以上増やさないために6人による緩やかな先発ローテーションの採用を提言するなど、球界や次世代の選手のために意見を発信してきただけに、無事にマウンドに戻った後、どんな言葉を残すのか楽しみなファンも多いことだろう。

冗談めかして「復帰の最短記録でも目指すのか」と聞いたことがあるが、彼は真顔で首を振った。「そうではなく、例えば5カ月の時点で(普通の選手の)7カ月ぐらいの回復までいったら、(後が)めちゃくちゃ楽になる。もし12カ月でマウンドに帰ってきても、かなり(仕上がり具合が)違うと思う」と話した。術後、半年を過ぎたが、今はどのくらいのレベルにいるのだろうか。興味は尽きない。私自身もダルビッシュ投手の故障によって滅多にない取材経験をさせてもらい、リハビリのイメージが大きく変わりつつある。

早川 雄三(はやかわ・ゆうぞう)1976年生まれ。埼玉県出身。2000年に共同通信に入社。本社、福岡、仙台でダイエー、楽天、西武、巨人などプロ野球を中心に取材。12年から米アーリントンを拠点に大リーグをカバー。