Jリーグ・チャンピオンと中国王者の対決。互いのリーグを全体のレベルで比較するのは困難だろうが、少なくともトップ同士の戦いから見えてきたのは、残念ながら日本より中国の方がレベルは高いということだ。

確かに中国チームの強さの大半を占めているのは、攻撃をコントロールしてしまう外国人選手の存在だ。だが、2007年に浦和レッズがアジアを制したときも、ワシントンとポンテという強力な助っ人がいた。アジアのクラブチームが外国人選手に頼らずに大陸王者になるのはまだ難しいということだろう。

昨年、国内3冠に輝いたG大阪が、中国スーパーリーグ4連覇中の広州恒大と対戦した9月30日のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)準決勝第1戦。敵地の中国・広州に乗り込んだG大阪は1―2で敗れた。とはいえ、第2戦に大きな可能性を残す結果を得たといえるだろう。

日本と中国のチームが対戦するときに常に感じるのだが、両国のサッカーに関する考え方はまったく違うのではないだろうか。日本はボール扱いのうまい人がサッカーをして、中国はアスリートがこの競技を行う。どっちが正しいというわけではないが、その特徴が両国のサッカーの質に色濃く反映されており、中国の方がよりアグレッシブだ。それが日本チームの戸惑うところでもあるのだが。

ボールを奪って攻めに出たら、強引にでもフィニッシュに持ち込んでくる広州に対し、G大阪はうまい試合の進め方をした。エウケソン、リカルド・グラルという前方への推進力のあるブラジル人選手にスペースを与えない。シュートを打たせても、守備ブロックの外側からなのでGK東口順昭が的確に反応した。ワールドカップ(W杯)ロシア大会アジア2次予選のシンガポール戦ではないが、ある程度のレベルに達したGKがいれば、ペナルティーエリア外からのシュートはそう簡単には得点にならないのだ。

押し込まれる展開のなか、G大阪は価値あるアウェーゴールを奪った。前半13分、左サイドの阿部浩之がゴール前にクロス。飛び込んだのはパトリック一人だったが、このボールが守備に戻ったフォン・シャオティンの肩に当たりオウンゴール。先制点となった。

攻撃の人数が十分いたとは言えない場面で生まれたこの得点は、現在の日本サッカー界が抱える問題に対する一つの教訓となったのではないだろうか。言い尽くされた「ゴール前にボールを入れれば、何かが起きる」という意味においての。この普遍とも言える格言を近頃の日本人選手は忘れつつある。

試合を通して、G大阪のチャンスは限られていた。だから、阿部は味方が一人という確率の低い状況でもクロスを入れた。それがゴールを生んだ。勝負を避けて相手の守備網の外側だけでボールをつないでいるサッカーがいかに無意味か、そのことがよく分かる。ところが、日本ではトップから育成に至るまで、ゴールよりもパスをつなぐ方が重要だと勘違いしている指導者が意外と多いのだ。

劣勢の敵地でワンチャンスを生かして先制点を奪い、1―0で逃げ切る。試合が行われた天河体育中心体育場で、かつて同じような展開で勝ちを得たチームがあった。1987年10月4日、中国代表とソウル五輪予選を戦った日本代表だ。原博実・日本サッカー協会専務理事のヘディングによる1点を守りきったのだ。しかし、G大阪に同じことは起こらなかった。

それにしても、広州が挙げた2ゴールはすごいシュートだった。特に前半36分にエウケソンの浮き球の縦パスを、ファン・ボーウェンが反転しながら左足ハーフボレーでたたき込んだゴールは、疑いなくワールドクラスだった。

同じようなゴールを見たことがある。90年イタリアW杯決勝トーナメント1回戦のイングランド対ベルギー戦。延長後半の終了間際にイングランドのガスコインが蹴ったFKをプラットがたたき込んだ決勝点に―左右の足の違いこそあれ―酷似していた。プラットのシュートがW杯の歴史に残る名ゴールであることを考えれば、ファン・ボーウェンの得点もスーパーゴールで間違いないだろう。

アジア版「銀河系軍団」の広州恒大。その強豪を相手に、完全敵地でG大阪はよく耐えたと思う。敗れたとはいえ、1点差で終えたとで傷口を最小限にとどめることができた。これもすばらしい。さらには、アウェーゴールという“ボーナスポイント"も手にした。これで21日にホームで行う第2戦は1―0で勝つか、たとえゴールを許しても2点差以上をつけて勝利すれば決勝に進出できる。週2試合が続くG大阪の過密日程は気になるところだが、久々に「日本」という国を意識できる試合が楽しめる。決戦に心躍らせる人も多いはずだ。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。