自分の浅はかさを恥じた。社会人野球のクラブチーム、茨城ゴールデンゴールズ(GG)の片岡安祐美選手兼任監督を初めて取材する機会に恵まれた。報道などを通じ、日本代表選手に選出される活動など競技にかける情熱には触れてはいた。それでも28歳の女性監督の持つ愛らしいルックスや快活な言動は、注目を浴びることが少ないクラブチームの顔となりやすく、アイドル的な色合いが濃いのでは、という思いも頭の片隅に抱いていた。実際に接し、そんな考えは霧散。片岡監督はまぎれもなく選手を率いるチームの柱だった。

コメディアンの萩本欽一さんが率いて脚光を浴びた茨城GGに所属し、2011年から指揮も執る。昨年の全日本クラブ選手権を制し、大会初の女性優勝監督となった。前回王者として臨んだことしの同選手権(9月4~7日・西武プリンスドーム)。準々決勝の鹿児島ドリームウェーブ戦は五回までともに無得点で、六回表に先制を許した。焦りや動揺も出そうな状況だが、片岡監督は「点が入ったことで試合は動く。こっちにも流れがくるよ」とげきを飛ばした。すると直後の攻撃で連続二塁打が出て追い付き、逆転勝ち。逃げ切りたいと守りに入る相手選手の心理や試合の機微をよみ、自軍の選手を落ち着かせて思い切りの良さを引き出す―。勝負師としての器量が垣間見えた。

1回戦では立ち上がりに不安を抱えるという投手を先発起用して意欲を駆り立て、無失点で勝ち上がった。試合後の取材では投手起用や代打策の理由、試合の分岐点など「立て板に水」のごとく、通りのいい声で明瞭に説明する。監督としてモチベーターとしての面だけでなく、理論をベースにした戦略面も持つという印象を受けた。選手はそれぞれ仕事を抱えており、「練習時間は限られる。じゃあ一人一人の自覚をかき立てるしかない。打撃で気持ちよく打つだけでは駄目。とことん考えて頭のレベルを上げよう、と言ってきた」。四球や進塁打を生かした小技を徹底し、投手や相手守備に重圧をかけてミスを誘う戦いぶりは指導力の成果だろう。

決勝で和歌山箕島球友会に敗れて連覇は逃した。片岡監督は「一番悔しい。練習からもっと厳しく詰めていかないと」と気合を入れ直した。ただ、8選手が新加入と戦力が大幅に入れ替わり、結果は芳しくなかったという今季序盤から、チームは大きな前進を示した。2年目で定位置をつかんだ川島翔平二塁手は「ほぼ毎日、1日300球のノックを監督から受けてきた。期待に応えたいという思いで成長できた」と言う。片岡監督については「男社会と言える野球界で、最初はどうなのかなとか思っていたが、今は人として尊敬できる。自分の理論や変わることのない信念を持っていて、この人について行きたいと思わせてくれる方」と野球人としての尊敬を隠さない。

153センチと小柄な体からは想像がつきにくいほどチームでの存在感は絶大。今後の目標について「企業チームに勝ちたいし、また日本選手権に出たいし、まだ出場したことのない都市対抗大会にも出ないといけない。意識を高くもってやりたい」と意欲はつきない。企業の支援を受ける社会人チームと比べ、現時点で力の差は大きい。それでも、その日が近づく可能性を感じさせてくれる力のこもった言葉だった。

伊藤貴生(いとう・たかお)1977年生まれ。鳥取県出身。他社での記者経験を経て2005年に共同通信へ入社。同年末から3年間、札幌支社でプロ野球日本ハム担当。本社運動部、名古屋運動部と移り、15年5月から本社運動部でアマ野球などをカバー。