米プロバスケットボールNBA、ウォリアーズを40季ぶりの王座に導いたステフィン・カリーが明かした成功への鍵は「日々努力すること」。NBAでは決して大きいとは言えない191センチの身長で、昨季レギュラーシーズンの最優秀選手となるまで登り詰めただけに、ごく当たり前の聞き慣れた言葉があらためて胸に響いた。

9月4日に東京都内で行われた契約するスポーツ用品メーカーのイベントで、ファンの前に登場。プログラムに組み込まれたバスケットボール教室では16~19歳の男女20選手に時折見本を示しながら直接指導した。

普段行っている練習を凝縮したというメニューも惜しげもなく披露するサービスぶりだった。「テレビでやっていればいつでも見る」と言うように、バスケットボールが好きなのだろう。徐々にその真剣さは増した。イベントとは思えないほどの激しさで取り組み、いつしか体には汗が浮かんでいた。

3点シュートや、ドリブルからブロックショットを避けるためにボールを高く浮かせる「フローター」と呼ばれるシュートなどを繰り返した。漫然と消化するのではなく、連続で決めるシュートの本数をあらかじめ設定。シュート練習の合間に呼吸を整えながらフリースローを行い、日頃から試合で起こりえる状況を想定したメニューを組んでいることがうかがえた。コートに立てば、毎回300本のシュートを成功させることを自らに課しているといい、そうすることで「自信をつけていく」と話していた。

何よりもボールを持ってからリリースするまでの速さに驚かされた。屈強な相手が集うリーグで戦うために培ったカリーの技術の高さと感じた。

191センチは米女子プロのWNBAで活躍する渡嘉敷来夢よりも1センチ低く、ウォリアーズで師事するスティーブ・カー監督と変わらない。カー監督は現役時代、マイケル・ジョーダンらとともにブルズの一時代を築いた名シューターとして知られるが、あくまでスーパースターを脇で支える役割だった。カリーは昨季クレイ・トンプソンとの「スプラッシュ・ブラザーズ」でレギュラーシーズン67勝を挙げる快進撃を支え、個人でも自身の記録を更新するリーグ史上最多286本の3点シュートを成功させた。キャバリアーズのレブロン・ジェームズが2メートル3センチ、ジョーダンが198センチであることを考えると、カリーが世界最高峰のリーグでスターとして君臨するすごさが分かる。

元NBA選手だったデルさんを父に、大学でバレーボール選手として活躍したソニアさんを母に持つカリーだが、当初からバスケットボール選手として超エリートだったわけではない。米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)によると、大学でも多くは期待されておらず、NBAは夢のまた夢だったそうだ。高校時代までは胸からシュートしていた。父にはより身長の高い選手と競うためにフォームの修正が必要と分かっていたため、一夏でリリースポイントを頭の上に変更。そのリリースの速さは今や約0・3秒。他のNBAのトップ選手と比較しても0・1秒は速いという。

この日参加した若手選手からNBAに入るために必要なことを問われたときに「近道はない」と努力する大切さを説いた。また体格面で不利に立たされることの多い日本勢には「人一倍努力して、身長でかなわなくても、これだけは誰にも負けないものを持つこと」と金言を送った。

むやみに時間を割くのではなく、目的を意識した上で積み重ねた途方もないハードワークが今を生んでいるからこそ、実際に逆境をはね返してきたカリーのアドバイスは力を持って聞こえてくる。「まだまだ上を目指せると感じている」と向上心が尽きない名手のひと言には、シンプルながら誰の心にも届くメッセージが詰まっていたと思う。

木村 督士(きむら・ただし)1979年生まれ。大阪府出身。05年共同通信社入社。大阪運動部を経て10年から本社運動部でボクシング、大相撲、プロ野球を担当。現在は米プロスポーツなどをフォロー。