打率3割、30本塁打、30盗塁を同時に記録する、いわゆる「トリプル3」は走、攻はもとより守備を併せた三拍子そろった好選手の証しでもある。プロ野球約80年の歴史で8人しかやっていないが、今年は2選手が同時に達成するのはほぼ間違いない。ヤクルトの山田哲人とソフトバンクの柳田悠岐である。

これまで達成したのは1950年に別当薫(毎日)と岩本義行(松竹)、53年中西太(西鉄)、83年簑田浩二(阪急)、89年秋山幸二(西武)、95年野村謙二郎(広島)、2000年金本知憲(広島)、02年松井稼頭央(西武)で、今年は65年ぶりに2選手の同時誕生と珍しいシーズンになる。

▽山田は30盗塁達成

山田は9月6日の広島戦で今季30個目の盗塁を決めた。この時点で33本塁打、打率3割3分3厘をマークしており、よほどのことがない限り「トリプル3」は確実だ。

それより34本塁打で2位に10本差をつけ、打率はトップの川端慎吾と1分差、打点は畠山和洋と4点差(9月14日現在)とともに同僚に肉薄しており、3冠王も夢ではない。チームが阪神、巨人と激しく優勝争いをしているのも、個人成績を意識しないですむことで、逆に数字を伸ばせるのではないだろうか。

▽ヤクルトの幸運?

ヤクルトは山田を2010年ドラフト会議1位指名で獲得したが、実は2度のくじ引きで負けていた。最初は斎藤(日本ハム)、2度目は塩見(楽天)が他球団と競合し、3度目でオリックスに勝った。「外れ、外れの1位」選手が大当たりだったのである。

オリックスはT―岡田の大阪・履正社高後輩の山田を狙いながら、くじに3連敗と全くついていなかったことになるが、ヤクルト、オリックスとも山田に対する評価はあくまで将来性を見越したものだったに違いない。

プロ3年目に94試合で99安打(3本塁打、9盗塁)の山田が開花したのは4年目の昨年で、セ最多の193安打(打率3割2分4厘)をマークし、29本塁打、15盗塁と今年の飛躍を予感させる成績を挙げた。

山田はいわゆる中距離打者で、ヒットの延長が本塁打となっている。本人も「走、攻、守すべてで活躍したい」と言っていて、盗塁を含めた走塁面に重きを置いている。

▽得点の多さ

山田は昨年106得点とリーグ最多で今季も107得点と断トツ。同じように高い得点をマークしているのが、もう一人のトリプル3の柳田で105得点。二人とも4割を超す出塁率を誇っていることがその要因だが、盗塁で得点圏に進塁できる強みを持っている。

柳田は打率3割6分7厘、32本塁打。あと1個で30盗塁に達する。こちらも優勝争いの中で積み重ねた内容の濃い数字である。

▽魅力いっぱいの若さ

柳田は26歳、山田はまだ23歳の若さである。中西太氏がトリプル3を達成したのは20歳の時で「怪童」と呼ばれた。

打率3割1分4厘、36本塁打、36盗塁で本塁打王にもなった。過去8人のトリプル3達成時に打撃タイトルを取ったのは中西氏以外では別当氏だけで、43本でホームラン王となった。その意味でも山田に注目したい。

▽懐かしい名前

私にとって8人の中で特に懐かしいのは簑田氏である。打率3割1分2厘、32本塁打、35盗塁で、中西氏以来30年ぶりの達成とあって注目されたが、他7選手と比べスター選手だったわけではない。

古いファンでも8年連続ダイヤモンドグラブ賞をもらった好守の外野手という印象だけかもしれない。通算成績は1286安打、204本塁打、250盗塁とまずまずだが、なにより「守備で飯が食えた」選手の一人だったからだ。

簑田氏が入団した当時の阪急(現オリックス)は上田利治監督で1975年から3年連続日本一の真ん中の年。「最強阪急」の中で、レギュラーをつかむのは容易でなかったはず。その阪急がオリックスに電撃的に球団譲渡を発表したのは27年前の10月。あの衝撃は今でも忘れられない。簑田氏と阪急がダブる。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆