お盆を終えた日本でまだ夏休みの宿題を終えていない子供たちが最後の追い込みを掛けているなか、短い夏休みを終えたF1は今週末のベルギーGPからシーズン後半戦をスタートする。

現在、F1チームには3週間の夏休みを取ることが義務付けられている。内容は―警備とメンテナンスを除き―原則ファクトリーを閉鎖しなければいけないという厳しいもので、2009年シーズンから導入された。一方で、ほぼ全スタッフが休みとなるため、同僚や家族との旅行など日本における夏休み同様、計画を立てて休暇を楽しめることから関係者にも好評で、今ではなくてはならない制度となっている。

リフレッシュを終えたF1関係者たちは、21日(決勝は23日)に始まるベルギーGPでシーズンを再開させる。後半戦の最注目ポイントが、ガレージからグリッドへ向かうときに利用していた「クラッチバイトファインダーの禁止」と「エンジニアによるスタートセッティングの指示禁止」だ。

クラッチペダルを踏む→ギヤを入れる→踏んだクラッチペダルを戻しながらアクセルをゆっくり踏み込んでクルマを動かす―。路上を走るクルマのほとんどがオートマチック車になった現在では、こんな経験をした人は少ないだろう。しかし、「オートマ限定免許」がなくマニュアル車が当たり前だった40代以上は、嫌な思い出込みで懐かしさを覚えるに違いない。なぜなら、クラッチをうまくつなげないと、「エンスト」つまりはエンジンストップ状態に陥ってしまうからだ。

昔のF1もマニュアルが当たり前だった。だから、見事なスタートで順位を一気に上げたり、大きく出遅れてしまったりと、常に波乱が発生していた。ところが、パドルシフトの採用でクラッチ操作が指先に移り、加えてエンジニアから無線伝達された最適なクラッチミートのセッティングをステアリング上で設定する現在においては、スタートでの波乱はほぼ見かけることがない。

そうしたレースの“スペクタクル"を復活させるべく、ベルギーGP以降はスタート時の全動作とセッティング決定がドライバーに委ねられる。もしかしたら、現在ではほぼ見かけることがない、エンストというシーンもあるかもしれない。誰もがほぼ同条件だったスタートセッティングが変わることで、クラッシュなどの危険も増えるだろうが、スタートを得意とするドライバーが一気にライバルたちをごぼう抜きにしたり、ポールポジションのドライバーが後方に沈むといった、1980年代では当たり前だったスタート時のドラマを見ることになる可能性は高い。

この試みが果たして、レースを盛り上げる要素になるのか、まずはベルギーGPのスタートを要チェックである。(モータージャーナリスト・田口浩次)