世界ボクシング評議会(WBC)バンタム級チャンピオン山中慎介(帝拳)が最大の難敵を迎え撃つことになった。

山中は9月22日、東京・大田区体育館で9度目の防衛戦を行うが、挑戦者のアンセルモ・モレノ(パナマ)は世界的な強豪。圧倒的な強さで第一人者の地位を得た山中が、どのようなボクシングを見せてくれるのか。玄人好みのレベルの高い攻防が予想されている。

2011年11月に世界王座を獲得した山中はその後、防衛戦を消化するたびに評価を上げてきた。

研ぎ澄まされた左ストレートは「神の左」とまで称賛され、一撃でKOするパワーがある。デビュー以来、23勝(17KO)2分けと無敗を守り、安定感でも抜きん出ている。

ただ、これまでは相手が格下でもあり、本人も「自分の力のすべてを見せたい。スリルがほしい」と話すほど。闘争心は衰えていない。

そういう意味でも今回のモレノは格好の相手といえるだろう。2008年、世界ボクシング協会(WBA)バンタム級王座に就いた後、12連続防衛に成功。昨年9月、負傷判定でタイトルを失ったが、不運な裁定だったとも伝えられている。

長いリーチを生かし、ストレートは非凡。さらにディフェンステクニックに秀でており、柔軟な身のこなしで攻撃をかわしてきた。

相手のパンチが当たらないため、ケミート(幽霊)という愛称までついている。戦績は35勝(12KO)3敗1分け。折り紙付きの実力者である。

試合は緊張感にあふれた攻防に終始するのは必至だろう。お互いにサウスポーでもあり、手の内が分かるまで序盤は慎重な展開になるのではないか。特にモレノは王者の強打を警戒し、フットワーク、ジャブをフルに使ってくるはずだ。

山中は中盤からプレスをかけたい。無用な前進をさけ、左のカウンターを決められるか。当たればモレノといえどもキャンバスに崩れるだろう。そのチャンスを慌てずに待つことが求められる。

これまで日本ボクシング界は数々の名サウスポーを輩出してきた。古くは海老原博幸、具志堅用高、最近では長谷川穂積、西岡利晃らがその代表である。

山中は偉大なる先輩たちに決してひけを取らない。「負けるリスクもあるが、モレノに勝てば実力を証明できると思う。こういう強豪と闘うのは幸せ」と意気込みを口にした。「神の左」のさく裂に期待したい。(津江章二)