「ユニバーシアード競技大会」。そう聞いてピンと来る人はあまり多くないだろう。出場資格が大学や大学院在籍中か、前年まで在籍した17歳から28歳まで、と規定されている学生世代の国際総合大会だ。「学生スポーツの祭典」「学生のオリンピック」と呼ばれることもある。日本でも東京、神戸、札幌、福岡と夏冬合わせて過去4度開催された。ことしは第28回夏季大会が、7月3~14日に韓国・光州で開催され、取材した。

各競技では夏から秋にかけて行われる世界選手権などの主要国際大会が重視されている。今回、日本は全18競技にエントリーし、約350選手が出場したが、7月24日から始まる水泳の世界選手権や、10月下旬開幕の体操の世界選手権代表の選手らは参加しなかった。だからそれらの競技に出場しているのはいわば「2番手」の選手たち。だが、そんな彼らが参加することで、さらにステップアップしていく。そんなことを予感させる大会だった。

競泳チームはコーチ、選手らの雰囲気が良く、メダルを獲得したり自己記録を更新した選手を、コーチや選手全員で祝福した。男子200メートル平泳ぎで銀メダル、400メートルメドレーリレーで銅メダルを獲得した小日向一輝(明大)も好結果を出した一人だ。小日向は「チームの力を借りて、自分の力の120%を出せる大会。ここで実力アップできればと思っていた」と目的を語った。その言葉通り、200メートル平泳ぎでは、自己記録を更新して表彰台に上がった。「来年を目指すためにいろいろな経験ができた」とリオデジャネイロ五輪を見据えた戦いに手応えを感じていた。

同じ競泳の女子100メートル平泳ぎで優勝した松島美菜(セントラルスポーツ)は、ロンドン五輪出場後に伸び悩んでいた。だが、4月の日本選手権でマークしていれば世界選手権代表に選ばれていたはずの好タイム(自己ベスト)で優勝すると、50メートル平泳ぎでは日本新記録を樹立。「ユニバの代表になれたことは大きかった。こうやって国際大会で真剣勝負ができるのは貴重」と松島は不調脱出のきっかけをつかんだ収穫に満足げだった。

体操男子の早坂尚人(順大)は、団体総合と種目別の床運動で2冠を獲得し、あん馬でも2位に入った。「選考会で選ばれて、派遣される大会は初めて」だったという。個人総合ではメダルを逃し、強豪たちの姿勢と見比べて「絶対にメダルを取りたい、という気持ちが足りなかった」と感じたという。翌日の種目別ではその反省を生かし、強い気持ちで臨み好成績につなげた。「もっと上の大会でメダルを取りたい」と意欲を燃やしていた。

開催地韓国のメディアこそ多かったが、その他の国から訪れたメディアは数えるほど。注目度も決して高いとは言えない。だが、五輪や各競技の主要国際大会に出られるレベルには届いていなくても、ユニバに出場することで大きな飛躍のきっかけをつかむ選手も確かにいるはずだ。選手村では、普段はなかなか接点のない他競技のトップ選手と知り合い、刺激を受けることもできる。それも国際総合大会の魅力だろう。そうやって競技を超えて高めあう仲間ができることで、さらに競技力が伸びていく可能性も出てくる。

今回の大会で、日本は金、銀メダルが各25個、銅メダル35個の計85個のメダルを獲得した。取材した選手の多くは、5年後の東京五輪で活躍したいと口にした。この大会をステップアップのきっかけにして、さらに成長していく選手たちをこれからも見守り続けていきたい。

柄谷 雅紀(からや・まさき)1985年生まれ。大阪府出身。全国紙の新潟、横浜、東京社会部で事件や事故、裁判を5年半取材。2013年に共同 通信に入社。翌年から大阪運動部でプロ野球のオリックス番を経て、バレーボールやバスケットボール、陸上、Jリーグの広島などを担当。